寒さが骨身に染みるようになった昨年末の深夜。番組の出演を終えてラジオ局から出てきたのは、季節外れな大胆へそ出しルックの若い女性。隣を歩く女性スタッフは厚手のダウンコートを着込んでいるのに、へっちゃらなあたりは、若さゆえなのか。
彼女は、女子高生や自身と同年代の女子大生たちなら誰もが知っている日本屈指のTikTok投稿者で、タレントの景井ひな(23才)だ。フォロワー数は、日本人女性では最多の1090万人(1月26日現在)を抱えて、各種メディアで“最も影響力のあるTikTokクリエイター”と評価される、超が付く人気者である。
熊本県出身の彼女は大阪での専門学生時代、2019年からTikTokを投稿し始めると、開始10日目の3本目に「すっぴんからのメイク動画」を投稿。美少女ルックスも相まって、あっという間にバズった。「部活帰りや仕事帰りの人が一番スマホをイジる」といわれる毎晩19時に動画を投稿し続けて、どんどんフォロワーを獲得。1年もたたずに100万人以上を集めると、和田アキ子や綾瀬はるからが所属する大手芸能事務所ホリプロからスカウトされた。
まさに“令和SNS時代のシンデレラガール”だ。
YouTuberやインスタグラマーなどを多数手掛ける、ある芸能プロダクション関係者は「投稿している内容は『歌ってみた』『踊ってみた』『挑戦もの』、おしゃれなファッションと、ほかのTikTokクリエイターと変わらないのですが、当初から動画のクオリティーが高かった。さらに流行への反応が速くて、先取り感覚も鋭い」と、人気の理由を説明する。
昨年、三省堂辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』で「タイパ(タイムパフォーマンス)」が大賞に選ばれたように、「最短時間で最大の成果を得る」ことに躍起になっている若者たちは、テレビや映画を倍速で視聴して、長めの動画のYouTubeよりも、15~30秒程度の動画のTikTokを重宝する。そんなご時世で、景井は冒頭3秒でユーザーの目を留める動画編集が、得意というわけだ。
景井本人は「TikTokの中での流行りは3、4日でどんどん変わります。流行りそうと思うものがあったら、“いいね”を付けて数時間後に再確認。もしも再生回数が伸びていたら、私もすぐに(同じものを)撮ってます」と、常に情報収集している努力を明かしている。もちろん動画編集は、全て自分で行う。派手な見た目の裏にあるのは、地道な作業と研究と試行錯誤の毎日だという。