学歴競争を勝ち抜くためには、中学入試をすべきなのか。高校入試が得なのか。幸運にも子供が勉強ができた場合、正解は東大より医学部なのか。藤沢数希さんの『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)は、学歴獲得の「コスパ」を追求すると同時に、中学から大学院までの受験制度や教育内容を俯瞰し、親と子が戦略的に取り得る選択肢を示す。私立中学受験にはいくらかかるのか。私立と公立のメリットとデメリット。「学歴」の真の価値まで。受験シーズン突入にあたり、国内外の教育事情に詳しい藤沢さんに話を伺った。【前編】では、中学受験に勝つ条件をはじめ、中高受験と高校受験のおさえておきたい要諦についてお届けする。
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身内の子の中学受験をきっかけに、日本の教育を考えるようになった
──もともとは「学歴否定派」だったと書かれています。その背景や理由を教えてください。
僕は地方出身で、大学受験のときは一人で参考書を勉強していました。大学を卒業後、海外の大学で博士号を取ってから外資系証券会社に就職したのですが、働き始めると学歴の話をすることなんてほとんどなかったですし、証券会社は良くも悪くも数字がすべてみたいなところがありました。サラリーマンを辞めて作家業が仕事の中心になってからは、経営者やインフルエンサーなどの、いわゆる成功した人たちとの交流が増えましたが、見ていると、学歴なんかぜんぜん関係ない。また、日本の受験勉強でトップクラスだった人たちが、大学での研究で成功するわけではないことも見てきました。
──そんな藤沢さんが、日本の教育や学歴を考えるようになった。きっかけは何でしたか?
身内の子が小学校の高学年になって中学受験することになってから、日本の教育について再び深く考えるようになりました。最初、学校説明会なんかに参加すると、違和感を覚えたんですよ。私立中学が、東大合格者数や医学部合格者数をアピールしていて、何か寒々しいものを感じていました。そうやって違和感を覚えながらも、中学受験の塾で身内の子の順位とかが出てきて、それまで何も勉強していなかったから、最初はビリに近いんですけど、どうやったら成績が上がるのか、いろいろ試行錯誤でやっていました。
見ていると、中学受験の問題って、すごく考えられていて、よくできている。人生の中で1、2年こういう勉強をするのは、それはそれで一つの教育だし、良い経験だろうと思うようになったんです。毎週全国のライバルたちと同じテストを受けて、順位が出て、努力によってその順位が少しずつ上がっていくというプロセスから、子どもが得るものは大きいとも考えるようになりました。