全国的に厳しい寒さが続いている。暖かい部屋でじっくりと読書を楽しむのはいかがだろうか。おすすめの新刊4冊を紹介する。
『コロナの夜明け』/岡田晴恵/KADOKAWA/1760円
日本初のコロナ患者認定は2020年1月15日。先の15日で丸3年経つが、事態は変わらない。どころか死者数は増え、そのほとんどは高齢者だ。この間、誹謗中傷にも耐えメディアで建設的な提言をし続けた著者が、前著の『秘闘』を小説に仕立て直す。前著が保身に走った者達のドキュメントだとすれば、本書は使命感を持つ者達の熱意と真心の群像小説。セットで著者の良心作だ。
『踏切の幽霊』/高野和明/文藝春秋/1870円
ホラーには2種類あると思う。怪異の沼に引きずり込むダークファンタジー系と、現実の裂け目に怪異が顔を出すこの世の不思議系だ。本書は後者。下北沢の踏切に出る女性の幽霊はどんな未練を残しているのか。心霊現象の謎は問わず、妻を亡くして新聞記者から女性誌記者に転じた松田に現実の殺人事件の謎を追わせる。この塩梅が実によく、情のこもった哀切のミステリーに。
『同調圧力のトリセツ』/鴻上尚史 中野信子/小学館新書/990円
この本の直前、いじめ自殺を認めない学校の話を読んでいたので中野氏の言葉が腑に落ちる。“いじめはあってはならない、だから、なかったことにしてしまう”。それに対し鴻上氏が“脳が目をつぶらない方法は?”と訊けば、中野氏は“気持ちのいい情報は大体間違いと思っておくといいかも”と。脳は“ラク”が好き。でも高負荷の思考を面白がる必要も。演劇やアートの効用も伝える。
『まぬけなこよみ』/津村記久子/朝日文庫/979円
四季のお題で書く“暮らしの歳時記”にして、著者の“記憶の歳時記”でも。ご本人も「これまで誰にも言わなかったような、これからも積極的に打ち明けるようなことはないだろう」ことを書いた、と。田んぼに感じる痛切な不安感(引越のトラウマ)、魚介類が苦手でトマト好きなこと、消えたお金30万円を通帳で発見したことなど、女友達と気の置けない会話を交わした気分。
文/温水ゆかり
※女性セブン2023年2月9日号