北朝鮮の北西部に位置する平安南道(県に相当)の集団農場で、牛への飼料配給は例年のままだが、住民への食糧配給は例年の半分としかなかったことが分かり、住民らから「政府は我々人間よりも牛の方を大事にしているのか」との声が出ているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では昨年12月から今年1月にかけて、強烈な寒波に見舞われ、気温は零下30度に達するほど下がった。その結果、地方では食糧や燃料が不足し、餓死した人や凍死した人が出ているという。
今年は1月から新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、首都・平壌市では患者増加を理由に市民に対し5日間のロックダウン(都市封鎖)を命じ、外交公館にも外出自粛を要請している。これは、平安南道などの地方都市も大同小異の状態で、厳しい感染予防措置がとられ、外出もままならないとされる。
このようななか、農村での頼みの綱はひと冬を越すための十分は食糧だが、ある住民はRFAに対して「農民が受け取った今年の配給は、約半年分の分量に過ぎない」と語っている。これは、昨年の農作物が不作で収穫量が減少したためとみられる。
一方で、牛に対しては例年通りのトウモロコシの穀粒と茎が配給されたとのこと。その結果、農民たちは、“牛が人よりも優遇されている”、“牛は人よりも重要なのか”と公然と不満を漏らし始めているという。
当局としては牛を農作業に動員して食糧生産を増やそうとしているのだろうが、牛を働かせるのは人間が空腹で働かなければ、結果的に牛も動かず、増産にはつがらないとの指摘も出ている。
韓国の農村振興庁が最近発表した「2022年北朝鮮作物生産量推定値」によると、北朝鮮の昨年の収穫量は451万トンで、2021年より18万トン減少している。