10年に一度という大寒波に襲われた日本列島。大雪で各地のインフラが打撃を受けるなか、冷気で思わぬダメージを負っているのが「ひざ」。だが、その痛みは日常生活の少しの工夫で治すことができると専門医は明言する。
足元から蘇る真冬の血行促進術
今年の寒さはひざに来る。
「あまりの寒さで家に閉じこもっていたら体中の筋肉が硬くなり、持病のひざ痛がどんどん悪化しました。いまや座った状態から立ち上がるのにも一苦労です」(都内在住の60代男性)
我汝会きたひろしま整形外科院長の原則行氏によれば、この時期はひざ痛を訴える患者が増えるのだという。
「寒いと血管が収縮して血行が悪くなり、プロスタグランジン、シクロオキシゲナーゼといった炎症を引き起こす物質が関節に溜まってしまう。それにより冬場は痛みを感じやすいと言われています。寒さで体を動かさなくなると筋肉が固まり、さらに血行が悪くなるという悪循環も生まれる。ひざ痛を悪化させる要因が冬には多いんです」
冬場は厚着になるため、ひざへの負担も増えやすい。国内に約3000万人と推定されるひざ痛持ちにとって、「寒さ」は大敵なのだ。
戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝氏が語る。
「ひざの痛みのほとんどは軟骨のすり減りによる『変形性膝関節症』です。ひざを伸ばす筋肉は人体で最も老化しやすく、20歳の筋肉を100とすると、70歳で40程度まで筋肉量が減ります。
筋肉の衰えによりひざの軟骨への負担が大きくなり、軟骨がすり減って痛みが生じます。そこにこの寒波で体が硬くなる。ただし、日常生活を少し見直すだけで、大半のひざ痛は自力で治せます」
そのひとつが、脱スリッパだ。
「足下から冷えるこの季節は暖かいスリッパを履く人が多いですが、スリッパだと脱げないように“前屈み”で歩く癖がつきやすい。これではひざに負担を与えてしまう。できる限り靴下で生活するように意識しましょう。ひざ自体を温めるのも重要で、暖房の利いた室内でも長ズボンを着用するのがよいです」(同前)