暦は2月に入り、少しずつ春の訪れが近付いているが、花粉症の人にとって春は悩ましい季節。今シーズン、スギ花粉の飛散量は過去10年で最多になる可能性が高いという。そんな時に頼りになるのが花粉症薬。鼻に差し込んでシュッとスプレーするだけで、鼻のつまりがよくなる点鼻薬は強い味方だが、血圧が気になる人は注意しなくてはならない。塩酸プソイドエフェドリンやフェニレフリン塩酸塩などが配合されており、命にかかわる可能性もあるという。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが解説する。
「これらの薬は血管を収縮させることで鼻水や鼻づまりを改善するのですが、血管が狭くなるということは水道のホースをギュッと握るようなものですから血圧も上がる。つまり、高血圧や心疾患のある人は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす可能性がある。点鼻薬は局所作用しかありませんが大量に使えば最悪の場合、死ぬこともありえます」(長澤さん・以下同)
そこまでいかずとも、点鼻薬の使いすぎはやはり禁物だ。
「ステロイドが入った点鼻薬は細胞分裂の速度を遅くするため、使いすぎると血管や粘膜がただれたり、別の炎症を引き起こすこともある。使うのはできるだけ少量、短期間にすべきです」
強い炎症抑制効果のあるステロイドは市販の点鼻薬に配合されることがあるのをはじめ、重度の花粉症では内服薬を処方されることもある。
「ステロイドは『糖質コルチコイド』とも呼ばれ、本来は血糖値を上げる物質。なので、服用すると糖尿病のリスクが上昇します。また、免疫力を低下させるので、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症にもなりやすくなります」
新型コロナとインフルエンザが同時流行するいま、免疫を下げるのが得策とはいえないのは自明だろう。さらに、ふだんからのんでいる薬がある人は、のみ合わせにも気を配る必要がある。
「抗うつ剤や睡眠薬など、中枢神経抑制作用のある薬をのんでいる人が花粉症薬をのむと、効果が増強され、副作用も増えるおそれがあります。薬以外に、アルコールとの同時摂取も同じ理由で控えましょう。
また、パーキンソン病の薬をのんでいる人は、どちらの薬にも血圧上昇作用があるため、異常な血圧上昇を起こすことがある。脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる症状にもつながりかねません」
逆に、花粉症薬を無力化してしまう薬もある。
「花粉症薬は一部の下剤や胃薬などに含まれるアルミニウムと相性がよくない。有効成分を吸着し、効果が減弱してしまいます」
※女性セブン2023年2月16日号