ヤラセとは何か、演出とは何か。1970年代後半から1980年代にかけて放映された人気番組の足跡を辿り、テレビの本質に迫るノンフィクション『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』について、著者のプチ鹿島氏(52)にインタビューした。
新聞計14紙の読み比べを趣味とし、ラジオに執筆にと幅広く活躍する時事芸人、プチ鹿島氏にとって、水曜スペシャル『川口浩探検シリーズ』(テレビ朝日系、1977~1985年)と同局の『ワールドプロレスリング』は、人生観を変えるほど影響を受けた大事な存在だという。
長野県出身の著者の場合、視聴できたのは1980年代から。中でも1982年5月の『恐怖! 双頭の巨大怪蛇ゴーグ! 南部タイ秘境に蛇島カウングの魔神は実在した!!』と、同年6月放送の『謎の原子猿人バーゴンは実在した! パラワン島奥地絶壁洞穴に黒い野人を追え!』は印象深く、お茶の間のテレビにカセットデッキを押し付け、何度も夢中で聞いた少年は、その未知の生物が本当にいると信じて疑わなかった。
しかし周囲は違うらしく、幼心にしまいこんだ積年のモヤモヤが、本書『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』に結実した格好だ。現に元関係者の消息を追い、話を訊くと、彼らは著者の番組愛に報いるように口を開く。情熱が情熱を呼び、新事実をも手繰り寄せた、ジャーナリスティックで奥の深い1冊なのである。
「最初はそれこそ、自分が大好きな番組の元関係者の方々に会って、話を訊いてみたいという、ごく純粋な動機で始めたんです。水曜の夜は川口浩、金曜はアントニオ猪木という、自分が本気でワクワクドキドキしてきたものが世間で過小評価されているのが、僕はずっと疑問で。
もちろん番組ではほぼ毎週発見される事実がなぜ新聞に載らないのか、さすがに僕も大人の事情に薄々気づいてはいくんですが、仮にツクリだとしても人をあそこまでワクワクさせるなんて逆に凄いよなって。その彼らが後々どんな仕事をし、テレビの今とどう繋がっていくのか、その辺も含めて訊いてみたかったんです」(プチ鹿島氏、以下同)
元隊員への取材に先んじ、まずは大宅文庫で〈資料のジャングル〉に分け入った著者は、同番組が1985年8月、同じテレ朝系『アフタヌーンショー』で起きた〈ヤラセリンチ事件〉のあおりを受けて終了した経緯を掴む。
「常々僕は1984、1985年辺りにメディア自体の潮目があると見ていたんですが、その見立てが今回は改めて裏付けられた感じはしましたね。例えば本書でも取材した嘉門達夫さんが『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』を出したのが1984年6月で、以来〈水スぺはネタとして処理する〉という、後のメタ視聴に繋がる土壌が形成されたのは興味深い事実です。