ワイドショーやネットニュースを連日賑わせている、回転すしチェーンでの迷惑行為騒動。「食の安全神話」「日本人の国民性」「性善説」──そんなお題目が並ぶが、過剰な熱量に違和感を覚える人も少なくないようだ。
《テーブルに備え付けの食器や調味料の交換をご希望のお客様には新しいものをお持ち致します》。回転すしチェーン『スシロー』の岐阜正木店の入り口ドアには、そう書かれた真新しい紙が張り出されていた。店内に入ると、回転するレーンの上にあるのは、すしの写真やイラストをのせた皿。回ってくる新鮮なネタを眺めて「どれを食べようか」と吟味する回転すしの楽しみは消え去っていた──。
「#回転寿司テロ」。そんなハッシュタグをつけられたいたずら動画がSNS上で拡散し始めたのは、1月下旬だった。『はま寿司』では、レーンを流れるすしの1カンだけをつまんで食べる、ほかの客が注文したすしに勝手にわさびをのせるといった迷惑行為が行われていた。一度取ったすしを再びレーンに戻す動画は『くら寿司』で撮影されたものだ。
挙げ句の果ては、冒頭のスシローだった。金髪の少年がしょうゆボトルの注ぎ口や未使用の湯飲みを舐め回して元の場所に戻し、回転レーン上のすしネタに唾液をつけた指で触れるといった行為が動画に収められていた。スシローは迷惑行為を受け、当該店舗のすべてのしょうゆボトルの入れ替えと、湯飲みの洗浄を余儀なくされた。動画拡散後、株価は160億円以上も下落。大損害だった。
渦中の少年は、岐阜県内の公立高校に通う男子高校生だった。近隣住民によると「近所の畑仕事の手伝いもしてくれる素直な子」だという。
「普段は黒髪で、“冬休みの間だけハジけたい!”と両親の許可をもらって金髪にしていました。気が大きくなっていたんでしょうが、まさかその冬休みにあんな迷惑行為をしてしまうとは……」(前出・近隣住民)
スシローの運営会社は、1月31日に警察に被害届を提出。さらに次の声明を発表した。
「迷惑行為を行った当事者と保護者から連絡があり、お会いして謝罪を受けましたが、当社としましては、引き続き刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります」
すでに「高校生の悪ふざけ」という範囲を逸脱してしまった。評論家の呉智英氏が分析する。
「当人は“悪さ自慢”の感覚でやったのでしょう。仲間内でふざけあっている分には拡散しないが、SNSに投稿すれば全世界に広がり、“消えない傷”として一生残る。何かというとネットに写真や意見をのせるけれど、その恐ろしさを理解できていない」
スシローでの迷惑行為の動画は、その後もSNSにアップされ続けている。2月に入ってからは、席に備え付けの甘だれの容器にしょうゆを混入させる女性の動画が炎上している。迷惑行為自体、言語道断であることに変わりない。その上、SNSでの「いいね」を欲するがために余波を想像せずにSNSにアップしたのは、二重の意味で“バカ”だったのだろう。