病気や加齢などによって咀嚼する力が衰え、食材を噛み砕けなかったり、飲み込めなかったりすることがある。そうした嚥下障害に伴う悩みを解決すべく開発されたのがギフモ社の『デリソフター』だ。
同社はパナソニックのビジネスアイディアを事業化するために設立された家電ベンチャーで、実際、嚥下障害がある父親の介護に追われていた社員の小川恵さんの体験が開発の発端となった。
小川さんの父親は、市販の介護食を食卓に出すと不機嫌になり、口にしてくれないことがあった。食事こそ体を動かせない父親の楽しみだったのに、介護食ばかりで家族と同じメニューを味わうことができず、好物の肉を食することもかなわないのが不満だったのだ。
もうひとりの開発者、水野時枝さんが言う。
「食材を細かく刻んだり、ミキサーを使ってペースト状にしたり、食べやすさが優先される介護食は、おいしそうに見えないのが難点でした。本製品はその点、料理や食材の見た目・味・においはそのままに、口に入れると歯茎や舌でつぶせるほどのやわらかさを実現しました」
食材の形を崩さず、筋切りや穴あけ加工の跡を目立たせず、隠し包丁のような役割を果たすのが「デリソフター専用カッター」だ。
電気圧力鍋をベースに、2気圧、120℃の蒸気を用いた独自技術で調理する。
「出来上がった料理は、一般的なメニューと見た目は変わりません。本製品を使えば、それぞれのご家庭で慣れ親しんだ料理でも、市販のお弁当でも冷凍食品でも従来通り召し上がっていただけるため、みなさんの食欲が旺盛になるのです」(水野さん)
使用方法はシンプルで、調理者の負担も少ない。とかく味気なかった介護食が抜群においしくなることによって被介護者は生きる意欲が湧き、それに伴い、家族の負担が格段に減っているという。「食のバリアフリー」を実現した画期的な逸品だ。
●商品DATA
ギフモ『デリソフター DS-1C』/5万9400円
サイズ/約幅29×高さ27.9×奥行37.5cm。重量/約8kg。5つの調理モードがあり、おやつ・野菜・魚・挽き肉料理・肉料理などをやわらかくできる。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2023年2月23日号