国際情報

容疑者が逃亡先としてフィリピンを選ぶ理由 暴力団関係者「金さえあればとにかく気楽な場所だ」

移送される前の小島智信容疑者(右)、渡辺優樹容疑者。フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)

移送される前の小島智信容疑者(右)、渡辺優樹容疑者。フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、強制送還された連続強盗事件の指示役たちが何年も逃げていたことで注目されるフィリピン。なぜ彼らはフィリピンを目指すのか――。

 * * *
 フィリピンの入管施設に収容されていた連続強盗事件の指示役4人。先に強制送還された今村麿人容疑者と藤田聖也容疑者の2人は2月7日、成田空港に到着した。

 入管施設から警察車両に乗り込む時は黒のTシャツに防弾チョッキ、水色の短パン姿。ネット上には口封じされる可能性を示唆するような情報が流れたこともあり、フィリピン側は襲撃を警戒したのか、彼らに防弾チョッキを着用させていた。彼らを乗せた車は小銃を抱えた警察官が先導し、マニラ国際空港は厳戒態勢だったという。

 彼らだけでなく、日本で容疑者として手配されている者、犯罪にかかわった者がフィリピンを逃亡先に選ぶケースは多い。賄賂を渡せば無理がきく、金が物を言いやすい国は、犯罪で稼いだ金があるやつらにとって居心地のいい国だろう。「金さえ払えば、警察官は警察の動きや地元のヤクザなどの動きを知らせてくる。公務員に物を頼むのも金次第。土地や利権に絡むごたごたも、金さえ払えばスムーズに進む」と、フィリピンの裏事情に詳しい暴力団関係者はいう。

 10年ほど前、フィリピンのある島の空港に小型の自家用飛行機とその格納庫を持っていた日本人ビジネスマンと話した時、フィリピンの汚職事情について、こう説明していた。

「フィリピンで何かしようとするなら裏金が必要だ。いったいどれくらい裏金がかかるのか最初のうちは見えなかったが、現場の下っ端役人から上層部に至るまで、すべての人間にくまなく裏金を渡す。金を渡せば思うように進む」 

 ただ裏金はそこで終わりではないらしい。ビジネスをしている限り、彼らとのつながりも続くのだ。その日本人ビジネスマンは「入管や税関、諸々の許認可など、現地で仕事をしている限り裏金は必要になる。金は人間関係とビジネスを円滑にすすめるための潤滑油だ」

 他にも逃亡先としてフィリピンが選ばれるのには理由があると、暴力団幹部は話す。「渡航時間が短い。物価が安い。そして気候がいいことだ」。今回の連続強盗事件の指示役たちのように収容所に入れられた時、気候はとても重要なポイントになるのだ。「日本には四季がある。留置所でも刑務所でも、おそらく入管の施設でも冬はとにかく冷える。寒いんだ。だがフィリピンは違う。暑さをしのげばいいだけだ」。凍えるような寒さに耐えることを思えば、蒸し暑さなど問題にならないらしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト