【著者インタビュー】千早茜さん/『しろがねの葉』/新潮社/1870円
【本の内容】
父と母、そしてまだ生まれたばかりの弟とともに村を逃げ、《光る山》がある石見を目指したウメ。しかし、ウメ以外は追っ手に捕まり、母の言葉でひとり≪まっすぐ、日の沈む方≫へ進む。そして出会った《銀の気が視えると歌われた山師》喜兵衛。《「銀の輝きは炎の比じゃねえ。山の胎闇が光を濾すんじゃ。銀はそうして生まれる」》と語る喜兵衛に連れられ、石見で《ここで生きていく術》を身につけていくが、過酷な運命を辿ることに──。
初の歴史小説で直木賞を受賞した。
タイトルの『しろがねの葉』とは銀を吸って輝くシダの葉のこと。石見銀山を舞台に、貧しさから逃散しようとした両親とはぐれて石見にたどりついたウメという少女が、過酷な運命に抗って生きる姿を描く。
千早茜さんが石見銀山を旅したのは2011年、プライベートの旅行だったが、世界遺産に登録された後で、歩いていると地元のガイドさんがいろんな話をしてくれたそうだ。
「『石見の女は夫を3人持ったと言われています』と、そのとき聞いたんです。史実ではないですけど、それぐらい銀掘りは短命だったと。好きな人を3人も看取る人生ってどんなだろう、いつか女性の一代記を書くことになったら、この話を書けたらと思っていました」(千早さん・以下同)
自分の判断だけで仕事しちゃダメだなと思いました
自分では、この先経験を積んで50代で書ければ、と思っていたが、担当編集者にぽろっとその話をしたところ、いま書くべきだと言われた。
「取材日程を組まれ、『いや無理』ってぎゃあぎゃあ嫌がる私を石見に連れていき、連載の予定を入れられて……。編集者ってプロですね。書けると判断して、実際、その通りでしたから。自分の判断だけで仕事しちゃダメだなと思いました」