北朝鮮北部の恵山市警察本部の交通警察部で会議中、日ごろから無理難題な命令を押し付けてくる上官に警察官5人が暴行を加えた事件が発生。これを知った金正恩・朝鮮労働党総書記は、党籍はく奪および鉱山への配置換えという事実上の収容所送りしたうえで、「上司の日ごろの言動にも問題がある」として免職処分を言い渡すなど「けんか両成敗」の判断を下していたことが分かった。
これを聞いた市民は日ごろから交通警察の横暴に耐えかねたこともあって、「さすがに首領様は素晴らしい判断をされた」などと金氏を褒め称えているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
5人の警察官は恵山市警本部の交通部に所属し、郊外から市街地へつながる主要な交通路の安全を担当しているが、会議に酒を飲んで出席したことを上司に見とがめられ、叱責された。
5人は上司に対して「大した問題ではない。いつも理不尽な要求されており、酔わなければ会議には出席できないほどだ」と文句を言い、さらに殴りかかるなどの暴力を振るった。
警察本部は翌日、5人に職務停止を命じ、警察本部の党政治部が5人の思想の見直しを含む集中的な調査が行われた。
この調査結果は北朝鮮の警察を管轄する社会保障省に送られ、同省から金総書記に報告された。金氏は関係者全員を処罰する特別命令を出し、5人とその上司が、ともに処分された。
市警本部ではこれらの処分について箝口令を敷いたが、うわさは広まり、ほとんどの市民が知ることになったという。
ある市民はこの騒動について、RFAに「市民は交通警官の度重なる職権乱用に憤慨しているからだ。『規則違反』だと文句をつけて、通行中の車やバイクを勝手に取り締まり、『免許を取り消すぞ』などと脅して金をせびり、ガソリンを奪うなどやりたい放題。これらの罰金や賄賂で夜の街で豪遊するなど、市民は怒っているのだ」述べ、「首領様(金氏)は庶民の心を良く分かっている」などと称賛したという。
北朝鮮の独裁体制には何かと厳しい視線を向けるRFAだが、このような報道は珍しいとも言える。