香港では、民主化活動やそれにともなうデモなどを厳しく禁じる香港国家安全維持法が成立した2020年6月前後から、海外へ移住する市民が増加。それにともない、香港特別行政区政府の公務員が減少している。このため、香港政府トップの李家超行政長官は海外の優秀な人材の香港への移住を推進する政策を発表するなど、人材集めに懸命だが、中国共産党政権の統治下にある香港を嫌って、人材難は当分解消されない見通しだという。香港各紙が報じている。
香港政府の統計によると、昨年1年間の香港の市民権保持者(永住者)の純出国者数は11万3000人だった。また、2021年8月までの1年間で香港の人口は全体の1.2%減少していることが明らかになっている。
香港政府は2月1日、専門人材の減少が主要な原因で、個人消費と輸出が振るわず、昨年の国内総生産(GDP)の伸び率は速報値で前年比マイナス3.5%だったと発表した。
このような状況をうけ、中国系メディアからは頭脳流出を食い止めるために香港政府が積極的に行動するよう求める論調が高まっている。
同様の危機感は香港政府内にも根強い。退職して移住する市民の多くは、公務員や医療従事者、教育者など、実際に政府で働いている人たちである。
香港の公務員は現在17万人強で、定員に1万7000人足りず、上級公務員は現在9000人以上が空席だ。
深刻な人材流出に対処しようと、李長官は昨年10月、シンガポールの2大学を含む世界トップ100の大学の卒業生を香港に呼び寄せ、香港で就業することを目的とした一連の施策を発表した。
さらに、人材確保に責任を負う孫玉函・労働福祉局長は今年1月初旬、シンガポールとフィリピンを訪問し、中国本土に近い香港の「利点」と、香港とマカオ、中国本土の一部を含む「グレーターベイエリア(粤港澳大湾区)構想」の下で珠江デルタの他の都市との統合が進んでおり、新たな発展段階にあることなどをアピールするなど高度人材確保に懸命だ。
しかし、ある市民からは「香港はもはや香港国家安全維持法の下で、自由な場所ではなくなった。今年中に家族で海外に移住する予定だ」の声が出るなど、中国統治下の香港からのエクソダス(大量出国)の勢いは止まりそうもない。