武術をテーマにしたバラエティ番組『明鏡止水~武のKAMIWAZA~』(NHK)では、MCを務める岡田准一の武術愛が毎回あふれ出ている。番組内容は、武術の達人が秘伝の技を実際に披露し、語り合うというややマニアックなもの。岡田は自らを「武術翻訳家」と名乗るように、時には達人たちと手合わせをしながら、専門家のような着眼点で技の極意を次々と分析していく。番組プロデューサーの森脇雅人氏に、番組制作のきっかけや岡田をMCとして起用した理由を訊いた。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第3回【前後編の前編】。
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岡田准一、古武術界で存在感を放つ
現存する日本最古の武術といわれる「香取神道流」、外国人が多く訪れる現代の忍術道場「武神館」といった武術や武道をマニアックに深掘りする番組が『明鏡止水~武のKAMIWAZA~』(NHK)だ。2021年にBSプレミアムの「レギュラー番組への道」枠で誕生したこの番組は、2022年に地上波で放送。好評を受け、現在、期間限定でレギュラー放送されている。
ゲストの百田夏菜子が「一切ついていけてないです」と唖然とするのも無理もない。伝統空手4大流派の型の違いや、琉球王国時代に空手が仮想敵にしていたといわれる剣術「薬丸自顕流」との共通点といったおよそ地上波の番組とは思えないディープな話の連発だからだ。これだけマニアックな番組が成立しているのは、MCのひとりとして岡田准一がいるからに他ならない。彼の起用の経緯を番組統括プロデューサーのひとりの森脇雅人はこう証言する。
「私は国際放送という部門で海外の人向けに武道を題材にしたドキュメンタリーを作っていたんです。そのときに様々な道場へ取材に行なっていたんですけど、知る人ぞ知る達人の道場に岡田准一さんの名札がかかっていたり、古武術の先生から『講習会に岡田さんが来て、私と腕相撲したよ』とか『私の技がかからなかった』みたいな話を聞いたり、日本の古武術界のあちこちで岡田さんが存在感を発揮していたんです。
もちろん岡田さんといえば、ジークンドーやUSA修斗、カリなどのインストラクター資格保有者であることは知られているわけですけど、それだけではないんだと。アクション俳優としてもいろいろな武術を取り込んで、相当真剣にやり込んでいらっしゃる。現代でこんなに武術ができる俳優さんは他に思い当たらない。もう私の中では最強と呼ばれた“現代の若山富三郎さん”だなと。
そういう達人の方がいるというのはもうテレビ界の宝だと思うので、武道をバラエティ番組としてやったらどうだと言われた時に、岡田さんと古武術の達人たちとのコラボレーションで何かが起きるんじゃないかと思ってオファーしました」