新型コロナワクチンの接種開始から2年が経過するが、接種後の死亡例も注目されている。1月20日の厚労省審議会によると、接種開始から昨年12月18日までに接種後の死亡として報告された事例は1966人に達する。群馬県在住のTさん(47才/女性)が憔悴しきった顔で振り返る。
「昨年12月に3回目のワクチンを打った夫はその日、頭痛を訴えて就寝し、翌朝“まだちょっと頭が痛い”と言いながら大工の仕事に向かいました。現場では11時頃に頭痛と吐き気を訴えて、車に戻ろうと歩き始めたときに倒れたそうです。そのまま目覚めることはありませんでした」
ワクチン接種後の死亡でよくあるのは、「仕事」の最中に体調が急変するケースだ。厚労省の報告書でも1回目の接種後、畑仕事をしている最中に倒れ、脳出血などの症状がみられて死亡した80代男性の事例が紹介されている。血液内科医の中村幸嗣さんが言う。
「接種後に過労になるほどの仕事を続けると、ワクチンによる免疫反応と労働の負荷が合わさって副反応が生じやすくなる可能性があります。接種直後は仕事でなるべく無理をせず、様子を見ることが大事です」(中村さん)
Tさんの事例が示すようにワクチン接種後の行動はその後の命の行方を左右する。
「ワクチンを打った後の行動に問題があり、接種で弱った体にさらなる負荷をかけてしまうケースがあります。中には自覚症状がない場合もあるので、接種後の過ごし方には充分に注意を払うべきです」(中村さん)
接種後の「運動」にリスクがある。2021年8月に突然死した中日の木下雄介投手は、1回目のワクチン接種から数日後に激しいトレーニングをしている最中に倒れて亡くなった。シンガポールでは、ワクチンを打った16才男性がスポーツジムで負荷の大きなトレーニングをしている最中に心不全で倒れた。これを受けてシンガポール保健省は「接種から1週間は激しい運動を避ける必要がある」と勧告した。
そこまでハードな運動でなくても油断はできない。1回目のワクチンを打った70才男性は、その4日後にゴルフをしている最中に意識を失った。ドクターヘリで搬送されたが、救急救命の甲斐もなく息を引き取った。
高血圧の持病があった40代男性は1回目接種後、リハビリ目的でルームランナーを行った直後に倒れ、心筋梗塞で死亡した。また70代男性は2回目接種の翌日、ダンス中に胸痛を訴え、心筋虚血を伴う急性大動脈解離でこの世を去った。医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広さんが言う。
「特に高齢者の場合、接種後に少しでも過度な運動をすると心臓に負担がかかって危険です」(上さん)
日頃からエクササイズに励むゆえ、接種後も大丈夫だろうと思い、つい運動をして心臓に負担がかかるケースが想定される。やはりワクチンを打った後は安静に過ごすのがベターだろう。
※女性セブン2023年3月2・9日号