旧統一教会信者である両親から止められ、教団から妨害されても屈せず、顔を出して宗教2世としての被害を訴え続けてきた小川さゆりさん。そんな彼女が自らの半生を綴った手記『小川さゆり、宗教2世』が、来月刊行される。教会や両親への赤裸々な思いを綴った覚悟の手記の内容について独占告白──。【第3回。第1回から読む】
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私は高校生の頃から19歳頃まで、アルバイト代を預けるという名目で母にほとんどのお金を渡していました。
あるときには私がアルバイトしていた介護施設まで、母がお金を取りに来たことがありました。その日は給料日で、手渡しでもらった給料袋を自分の白いロッカーにしまっていました。
施設のデイサービスで高齢の利用者さんのお世話をしていたところ、施設のインターホンが鳴りました。当時一緒に勤務していた女性職員から「お母さん来てるよ」と教えてもらい、玄関へ行くと、深刻そうな顔をした母が立っていました。
「さゆりちゃんごめん、お兄ちゃんたちの大学のお金もあって今月本当に厳しくて、絶対に返すからお給料もらえないかな」
私は自分のためにお金を貯めたいし、嫌だから帰ってくれと頼みましたが、母は「お願い」と言って渡すまで帰ろうとしませんでした。その月の給料のほぼすべて、15万円ほど渡しました。
そうしたこともあって、教会での出来事で精神状態が不安定になり、高校卒業後は仕事もうまく続かず引きこもりがちになってしまっていました。
そんなとき、きょうだいが私の部屋に入ってきて言いました。
「お母さん言ってたよ。あの子家にお金も入れないし、いつになったら働くんだろうって」
この言葉に私は大きなショックを受けました。結局、家に入れるお金のことばかりなのかと感じてしまったのです。
統一教会を脱会したのには様々なきっかけがありましたが、この母の言葉が一番大きかったように感じます。
「お母さんは私のことをお金のあてにしか思っていないんだ」
そう感じ、脱会を決意しました。