毎年「花粉症」に悩まされている人にとってイヤ~な季節がやってきた。今年は例年以上に大変そうだが、それに加えて医師は「食べ物」によって引き起こされる合併症に警鐘を鳴らしている。
環境省によると、今年春のスギ花粉の飛散量は関東や近畿などで、過去10年間で最多となる見通しだ。東京でも昨春の2.7倍になるとされる。花粉の飛散が「多い」と予想される日数も23区内で51日、多摩地域で52日と平年を大きく上回る。
それに伴って懸念されるのは“花粉症デビュー”する人の増加だ。ナビタスクリニック理事長で医師の久住英二氏が語る。
「よく喩えられる話ですが、人はそれぞれ花粉をどれだけ許容できるかのコップを持っており、それを超える量の花粉が体内に入ってくると、花粉症が引き起こされる。今年は飛散量が多いため、新規に発症する患者が増加すると予想されます」
もともと花粉症患者は年々増え続けており、環境省の「花粉症環境保健マニュアル2022」によれば、1998年に19.6%だった有病率は2008年には29.8%、2019年には42.5%と、10年ごとにほぼ10ポイント増加している。なかでも多いのがスギ花粉症で、日本人の3人に1人が悩まされているという。
花粉症になると、くしゃみや目のかゆみなどのツラいアレルギー症状に襲われ、時には咳や喘息が起こることもある。
だが、怖いのはそれだけではない。花粉症の人が、「ある食べ物」を口にした時、さらに厄介な症状が引き起こされることがあるという。都内に住むAさん(75)が振り返る。
「2年前の春、スギ花粉症を発症していた時に魚料理やトマトサラダを食べていたら、喉のイガイガが止まらなくなったんです。『あれ、何か食べ物のアレルギーかな』と思って、近くの病院で血液検査を受けたらトマトが原因であることが判明しました。
医師からは『スギ花粉症の方が食べると口腔アレルギーが起きることがあるんですよ』と言われました。それ以来、花粉症の時期は、トマトを避けるようにしています」
この症状、思い当たる節がある人もいるのではないだろうか。Aさんを襲ったのは、「花粉─食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれるもので、近年、患者数が増えていることから専門医の間で警鐘が鳴らされているという。
日本橋浜町耳鼻咽喉科院長の許芳行氏が語る。
「花粉症の人がある特定の食べ物を摂取した際、口腔や喉頭などに違和感、かゆみ、刺すような痛みといったアレルギー反応が生じることを指します。基本的に口腔内の軽い症状が多いですが、稀にアナフィラキシーや呼吸困難といった重篤な症状が出ることがある」