環境省によると、今年春のスギ花粉の飛散量は関東や近畿などで、過去10年間で最多となる見通しだという。花粉の飛散が「多い」と予想される日数も23区内で51日、多摩地域で52日と平年を大きく上回る。そんななか近年、患者数が増えている「花粉─食物アレルギー症候群(PFAS)」は、専門医の間で警鐘が鳴らされているという。
PFASは花粉症の人がある特定の食べ物を摂取した際、口腔や喉頭などに違和感、かゆみ、刺すような痛みといったアレルギー反応が生じることを指す。日本橋浜町耳鼻咽喉科院長の許芳行氏によると「基本的に口腔内の軽い症状が多いですが、稀にアナフィラキシーや呼吸困難といった重篤な症状が出ることがある」とも。
花粉症以上に厄介な症状を引き起こすことがあるPFASだが、「現状で発症を防ぐ有効な薬はない」(許氏)という。そのため、まずは自分の体質をよく知っておくことが重要だ。
「花粉症の検査は、大きな病院でなくても近所のクリニックで実施している場合があります。血液検査をすれば、発症を招く花粉の種類を特定できますし、PFASを引き起こす食べ物をより詳しく知りたいなら、皮膚テストを受けられる専門施設を紹介してくれます」(同前)
本人には自覚症状がなくとも、すでに「隠れPFAS」になっている可能性もある。ナビタスクリニック理事長で医師の久住英二氏が語る。
「鼻水が出るなどの自覚症状が生じる前から、花粉に対する体の反応は始まっています。症状を感じなくても、トマトなどの食べ物を食べた際に、口の中がピリピリするなどの症状が出たらPFASの疑いがあります。また、花粉が多く飛散する時期ほど症状が悪化しやすいことも知っておきましょう」
検査でPFASを発症する食べ物が判明したり、“怪しいな”と思われる食べ物があったりする場合、それを口にしないことが一番の予防法となるが、一方で「調理法」によっては摂取しても大丈夫なケースもあるという。
「PFASは、加熱してたんぱく質の構造を変えてしまえば、アレルギー反応が生じにくくなります。例えばトマトの場合、トマトケチャップやよく煮たトマトソースであれば発症に至らないケースがある。
果物の場合は、ジャムなどの加工品は摂取できることが多い。カットフルーツや生搾りジュースは避けたほうがいいでしょう」(許氏)