芸能

《49歳で当たり役》俳優・岡部たかし 昨年話題になった「迫真のパワハラ演技」の裏側を語る

(撮影/横田紋子)

昨年放送の『あなたのブツが、ここに』と『エルピス』で当たり役を掴んだ(撮影/横田紋子)

 現在放送中のドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系列、水曜夜10時〜)に出演中の俳優・岡部たかし(50)。ドラマは架空の「西さいたま市」が舞台の物語で、同市の『児玉交響楽団』を再生させるために呼ばれた指揮者で市長の息子の常葉朝陽(田中圭)や、元天才ヴァイオリニストの谷岡初音(門脇麦)をはじめとする団員らの奮闘を、岡部演じる小野田隼がオケの事務局長として支えている。

 昨年のドラマ出演は9本とバイプレーヤーとしての存在感を放つ岡部さんだが、49歳で出演した『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)と『エルピス』(カンテレ、フジテレビ系列)で当たり役に出会うまでの約25年間、ずっと日の目を見ることなく、苦労を重ねてきたと言う。

 30代以降、地元の仲間たちとの間にできた距離感の一方で、演じることの面白さを追求する日々。長い下積み生活で、彼はいったい何を掴んだのだろうか? 本人に話を聞き、俳優・岡部たかし像を紐解いていく。【全3回の第2回。第1回から読む】

(c)NTV

門脇麦主演『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系、水曜夜10時〜)では楽団の事務局長・小野田役を担当(c)NTV

30代後半で「あきらめた」こと

──役者として売れないまま、でも約20年間も続けてこられたことがすごいと思うんです。自分は変わっていなくても、周囲は変わるじゃないですか。

岡部:地元の和歌山にね、今でも交流のある友人がいるんですよ。でも今から15年くらい前は友人たちには会えなかった。工業高校出身の友人が多いですから35歳にもなると、経営者になって、家庭があって。幸せそうだなって。

 たまに一緒にご飯を食べに行くと「いいな、おまえは夢を追っていて」って言われていたんです。でもなんも言えない。当時、東京で舞台には多く出演して、面白いことをしていたつもりですけど、テレビにはチョイ役でしか出ていない。説得力がなかったんですよね。だから地元に帰省したときもコンビニで友人を見かけると……気付かれないようにそっと隠れていたこともありました。

──ただやはり2022年は岡部さんの機運が巡ってきたのではないでしょうか? いずれも話題作の『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)と『エルピス』(関西テレビ、フジテレビ系列)に出演し、キーになる人物を演じられた。

岡部:僕ね、30代後半で「役者でごはんを食べて行こう」という気持ちをあきらめたんです。このままバイトを続けながら、好きなように面白いことができていたら、それで自分の生涯を終えたらええんかなあと。「もっと上にいかなあかん」「いい家に住まなあかん」とかいう上昇志向がまったくなくなったんです。そしたら『あなブツ』と『エルピス』という面白い作品に出会えた。いい意味であきらめることも大事なんかなって思います。

 でもそれまでとやっていることは全然変わらなかったんですよね。ずっと「面白くなりたい」という気持ちだけは切れずにここまできていますし。運が良かったのかなあ……。

(c)NTV

放送中の『リバーサルオーケストラ』での役柄は“オケの成長を見守る事務局長”(c)NTV

──運も実力だと思いますが?

岡部:『あなブツ』は台本を読んだときに「面白いなあ」って思ったんですよ。オール関西弁で演じやすそうと思ったし。

──演じられた、キャバ嬢だったヒロインを助ける葛西信夫役。運輸会社の社長なのに奥さんにも、事務員さんにも逆らえなくて、ついにはコロナ感染するという……

岡部:実際に演じてみたらやりすかったですし、現場の雰囲気も良かったです。でも始まる前は、まさか作品がギャラクシー賞をいただけるほどの高評価を得るとは思っていなかったです。僕以外のキャストさんもそうだったんじゃないかなあ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
チェーン店ではない昔ながらのレトロな喫茶店は日本の若者だけでなくインバウンド客からも人気を集めている(写真提供/イメージマート)
インバウンド客が行列をつくる「レトロな喫茶店」 マスターが悩まされる支払いトラブル「ドルしかない」客に「コンビニでおろしてきて」と伝えても「十中八九、戻ってこない」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
事件は、琵琶湖からほど近い滋賀県長浜市の閑静な住宅街で起きた(時事通信フォト)
「死んじゃうんじゃないの、なんて冗談を…」裁判所事務官の“黄色い家”の冷凍庫から女性遺体 証言で浮かび上がった“奇妙な家族関係”《事件の端緒はある夫婦の遺書》
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
会見中、涙を拭う尼僧の叡敦(えいちょう)氏
【天台宗僧侶の性加害告発】フジテレビと同じ構造の問題ながら解決へ前進しない理由とは 被害女性への聞き取りも第三者の検証もなく、加害住職の「僧籍剥奪せず」を判断
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
生活を“ふつう”に送りたいだけなのに(写真/イメージマート)
【パニックで頬を何度も殴り…】発達障害の女子高生に「生徒や教員の安心が確保できない」と自主退学を勧告、《合理的配慮》の限界とは
NEWSポストセブン
5人での再始動にファンからは歓喜の声が上がった
《RIP SLYMEが5人で再始動》“雪解け”匂わすツーショット写真と、ファンを熱狂させた“フライング投稿”「ボタンのかけ違いがあった事に気付かされました」
NEWSポストセブン