ドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系列、水曜夜10時〜)に小野田隼役で出演中の俳優・岡部たかし(50)。地元・和歌山の工業高校卒業後、一度は一般企業へ就職。24歳で上京後、芸能人がどんなものなのか理解もしないうちに劇団員となり、俳優になった。ドラマ、映画、舞台など約25年間で数え切れないほどの作品に出演。時には台本に名前がない役だったこともある。
そして今はドラマの中核……とも言える番手に定着した岡部さん。まさに「中年の星」と呼び称えたいほどの活躍を見せる彼に話を聞いた。【全3回の第3回。第1回から読む】
「ホンマはできる子やって思ってたで」
──連続ドラマでは昨年の『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)と『エルピス』(カンテレ、フジテレビ系列)に続いて、今は『リバーサルオーケストラ』に出演されています。この活躍ぶり、さすがに地元・和歌山の皆さんの反応が変わったのでは?
岡部:母親なんてつい最近まで「役者なんていつやめんねん」「将来どうすんのよ」って言われていたんですよ? それが『エルピス』以降「おまえは(芝居が)上手やな」「ホンマはできる子やって思ってたで」って言われています(笑)。
──今、『リバーサルオーケストラ』では市長とその息子、指揮者の常葉朝陽(田中圭)の世話役のような小野田。これまでの役柄とは一転した、温和で腰の低いおじさんですよね。
岡部:それを観た母親はまた上から目線で「今日の演技は自然やったな。田中圭さんにも負けてへんで」とか言ってくるんですけどねえ(爆笑)。今回の役も、僕が役に入る時にいつも探している“ノリ”が作れたんですよ。だから村井とキャラクターが180度違ってもスッと入っていくことができました。
──その“ノリ”は具体的にどの辺で掴んだんでしょうか?
岡部:第1話でね、全力疾走するシーンがあったんです。谷岡初音(門脇麦)がオーケストラ入団を拒否して逃げるんですけど、朝陽と小野田で走って追いかけるんです。もう階段も2段飛びくらいの勢いで、走る、走る。
実は同じ日に僕、長台詞があったんですよ。谷岡初音の経歴をひたすら説明するシーンだったんですけど、ひどく緊張しましてね……。「できへんかったらどうしよう」と、前夜眠れなかったくらいです。もし台詞がつっかえたら、田中さんや門脇さんに「ダッさいおっさん」とか思われるんじゃないかって、不安で、不安で……。
──いや、おふたりはそんなこと絶対に思わないと思います(笑)。
岡部:それがね、全力疾走するシーンで、ふっと掴めたんです。小野田の“ノリ”ができた。もっと言いますと、僕、その走るシーンのこと、台本を読んでも全然分かっていなかったんですよ。それよりも長台詞のことしか頭になかった。だから想定外に走ることになってしまったんですけど、その後に小野田が僕におりてきて「あ、あの長台詞は、メガネをかけて、とうとうと説明するだけで面白いんかな」となりました。それが今の撮影でも続いています。