アニメを中心に歌手としても活躍している吉野裕行(49才)は、意外にも「劣等感が強い」と語る。
「勉強も運動も苦手な子供だったので、自分にしかできない何かをずっと探していました。昔から“声が変わってるね”と言われていたので、声優なら……と思ったんです。むしろ声優で成功しなかったら社会的に死ぬかもしれないとまで思って、この道を選びました。
アニメでの経験は数多く積ませていただけていますが、吹き替えはまだまだ。音楽活動だって、まだまだわからないことだらけなんですよ。結局、経験以外にレベルアップする手段はないから。歌も楽器もまだまだです」
キャリアを積んで演技の精度を高めるほど、声優という仕事を冷静に見つめ直してきた。
「シナリオを書く人、絵を描く人、宣伝をする人……どんな作品も、大勢の人がそれぞれの仕事を全うして世に出てきます。ぼくたちは“声を吹き込む人”。注目を浴びる機会は増えていますが、作品のためのパーツの1つであることは変わりません。
キャラクターたちの人生は、作品の中にしかない。もしミスがあっても、彼らは彼らの意思で訂正することも、謝罪することもできない。だから、絶対に間違いたくないんです」と語る吉野に、声優という“職人”の姿を見た。
──最近ハマっていることは?
「シューティングゲームの『APEX』。もともとビデオゲームが大好きで、またやり始めました。あまり練習する時間がないから、すぐゲームオーバーになっちゃうんだけど(苦笑)。何回かに1回勝てたら、充分楽しめます」
──今後の目標は何ですか?
「具体的には決めていません。有言実行できる喜びより、有言不実行の悲しさの方が大きいから。ただ、同期が多い世代なので、若い頃から『人と違うことができるようになって、早く次のステージに行きたい』と思い続けています」
──定番のリフレッシュ方法は?
「決めません! 決めたら、逆にストレスになるから(笑い)。起きたときの気分で自由に過ごします。もともと事前に決めるのが嫌いなので、旅先でも、当日の気分と持って行った服が合わなければ、現地で別の服を買うほどです」
【プロフィール】
吉野裕行/1974年2月6日生まれ。千葉県出身。1996年に声優デビュー以降、アニメ、ゲーム、ナレーションなどで活躍。2013年にアーティストデビュー。主な出演作は『機動戦士ガンダムOO』(アレルヤ・ハプティズム)、『弱虫ペダル』(荒北靖友)などがある。
撮影/岡本俊 取材・文/小山内麗香
※女性セブン2023年3月2・9日号