ふかふかの敷布団に糊の利いたシーツをかぶせ、掛け布団にくるまって眠る──日本人なら誰でも経験したことのある日常の一コマだが、近年「布団よりもベッドの方がハウスダストが少なく、睡眠の質が高い」という説も生まれている。雨晴クリニック院長で睡眠が専門の坪田聡さんが解説する。
「部屋がフローリングならば、確かにベッドの方が睡眠の質は高まります。フローリングに布団を敷くと、床が硬くて体に負担がかかるうえ、熱も逃げやすい。床から30cm以上の高さで寝ると、ハウスダストを避けられるのでアレルギーの人にはいいというメリットもあります。
ただし畳の部屋ならば、布団で問題ありません。布団の方が気軽に干せるので衛生的にいいというメリットがあります。自分の部屋の間取りによって、メリットとデメリットを勘案して選ぶことを推奨します」
ナイトキャップ(寝酒)が睡眠の質を下げることも、世界の常識だ。
「にもかかわらず日本人は海外と比べて寝酒を好む傾向にあります。実際に欧米やアジアの10か国を比較調査したところ、日本では不眠を解消するためにアルコールを摂取する割合がダントツに高く、3割を占めることが明らかになっています。
確かにアルコールには、不安を減らして眠りに誘う働きがあります。
しかし睡眠が浅くなるし、夜中にトイレで目が覚めるので、トータルで考えればやめるべき。次第に飲酒量が増えて依存症になる恐れもあります」(坪田さん)
質さえ落ちなければ、どのくらいの時間眠るべきかはそれほど気にする必要はない。早稲田大学名誉教授で生物学者の池田清彦さんが言う。
「適正な睡眠時間は人によって変わります。長らく“7時間睡眠の人が長生きする”といわれてきましたが、3〜4時間でも健康を維持できるショートスリーパー体質の人もいます。逆にアインシュタインは、健康を保つために10時間の睡眠が必要だったといわれている。年をとると睡眠時間が短くなるともいわれますが、逆に長くなる人もいます。重要なのは、時間にこだわらないこと。自分に合うと思える睡眠をたっぷり取ってください」
眠くなったら、スペインのシエスタのように昼寝を取り入れるのもいい。だが長い昼寝はNGだ。
「若い人なら20分、高齢者でも30分以内にしましょう。夜の睡眠に影響を与えないように、午後3時までには起きることも心がけてほしい。短時間で目覚めるためには、ベッドや布団で横にならないこと。椅子にもたれかかったり、机に突っ伏したりして寝て、アラームをかけておきましょう。
寝る前にカフェインを摂ると、20〜30分で覚醒効果が出て目覚めやすくなります」(坪田さん)
※女性セブン2023年3月2・9日号