日本で長らく信じられてきた健康法であっても、実は間違った知識もある──。日本と海外で大きく異なるのは入浴の習慣だ。ほとんどの国がシャワーで済ませる一方、日本では温泉をはじめとして湯船につかることが好まれるが、罠もひそむ。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが解説する。
「皮膚は表面の油分と細菌などが一定のバランスを保つことで正常な状態を維持していますが、毎日長時間お湯につかることで、必要な皮膚の油分や細菌を洗い流してしまう恐れがあります。皮膚のバランスが崩れると炎症やかゆみの原因になることもあり、石けんを使いすぎると常在菌を殺してしまう。特に毎日石けんで体をゴシゴシ洗うのは控えた方がいいです」
一大ムーブメントを巻き起こしたサウナも、“ととのう”つもりが、命を危険にさらす可能性すらある。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
「熱いサウナの後に水風呂に飛び込むと、短時間で血管を激しく収縮させるため、想像以上に心臓に大きな負担をかけます。もし入るなら、利用時間を守って、熱くなったらがまんせずに外に出ること。水風呂につからずに、水を手足にかける程度に留めましょう」(秋津さん)
高温の場所がリスクになるのはホットヨガも同様だ。秋津さんが続ける。
「ヨガは本来、自然環境で体に負担をかけずに行うもの。実際、欧米のヨガ教室のほとんどは常温です。
高温で行えば脱水症状になる可能性があり、心筋梗塞などの循環器疾患を引き起こすリスクがあります」
海外ではほとんど実施されていない運動はほかにもある。皇居ランや東京マラソンから始まったマラソンブームはいまだ衰えないが、欧米では「長距離走が健康にいい」は過去の常識だという。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。
「長距離走は、やりすぎると活性酸素が増えて老化につながることが複数の研究で明らかになっています。現在アメリカで主流なのは10〜20分程度の比較的短時間でできる筋トレや短距離走などを小刻みに、日常的に行う方法です」(室井さん)
特に早朝、起床後すぐの長距離走は血管に大きな負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞など循環器疾患を引き起こすことがあるとされている。
「日本で古くから行われている乾布摩擦や冷水摩擦も、特に高齢者にとっては心臓への負荷が高く、危険です。アメリカではまったく見かけません」(大西さん)
※女性セブン2023年3月2・9日号