細谷佳正(41才)は、キャリア約20年になるベテラン声優だ。『クレヨンしんちゃん』(野原せまし)『進撃の巨人』(ライナー・ブラウン)『この世界の片隅に』(北條周作)など、数多くの作品に出演している。
「吹き替えの仕事は、俳優さんの顔を通して見たときに、せりふや声のトーンが似合ってるかどうかを気にする方で。アニメの場合は、自分のやりたいことを自由にやることにしています」
こうした考えは、同じく声優の、故・石塚運昇さんから学んだと、細谷は振り返る。
「若い頃のぼくのせりふの喋りが“決められた譜面どおり演奏する演奏者”とすると、運昇さんはジャズの演奏者。その場で思いついたものを、アドリブ的に新鮮に発現させていく人でした。説得力があったし、生きた人間の言葉のようにリアリティがありました──それが、すごく素敵でしたね。
『BANANA FISH』(フレデリック・オーサー)の現場で仕事って、“どうでもよくなってからが本番なんですよね?”って質問したんですよ。役を通して自分の技術を誇示したりとか、よく見られたい欲求とか、そういうものを全部そぎ落として“もうどうでもいいや”って思えてからが本当の意味で仕事の始まりなんだろうなと。運昇さんは『何だよ(笑い)』って笑ってました」
これからも活躍の場を広げていく。
──ご自身は「何キャラ」だと思いますか?
「“いろんな役をやってるのに、個性的な役だけ注目されるタイプ”だと思います」
──読書が好きとのこと。 好きな作家はいますか?
「物語はほとんど読まずに、『心理学』とか『歴史』とか実践的な本ばかりを読みます。でも、村上春樹さんは好きです」
──40代になってから、どんな変化がありましたか?
「昨年の終わりぐらいから“必ず毎日やる”って目標にして始めたことがあって。些細ことなんですけど。それをするには朝がいいなっていうことがわかって、朝型生活に変えようとしています。朝の、散歩が本格的な趣味になりました」
【プロフィール】
細谷佳正/2月10日生まれ。広島県出身。2005年にアニメデビュー。2014年、2016年に声優アワード「助演男優賞」を受賞。主な出演作は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(オルガ・イツカ)、『ゴールデンカムイ』(谷垣源次郎)など。
撮影/岡本俊 取材・文/小山内麗香
※女性セブン2023年3月2・9日号