側近秘書官の差別発言が「オフレコ破り」され、外遊に同行した長男の「公用車で観光」が報じられ、日銀総裁人事はまさかの“誤報”も飛び出した。ドタバタ劇を繰り広げている岸田文雄・首相の周囲で、いったい何が起きているのか。そこで本誌・週刊ポストは官邸詰めや自民党担当の政治記者4人による、内側から見た「岸田政権の正体」についての覆面座談会を開催。発言者を特定されないために社名、担当部署は伏せるが、記者AとBはキャップクラスのベテラン、記者CとDは第一線の若手だ。【全4回の第2回。第1回から読む】
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司会(編集部):官邸の体制という面では、記者とのオフレコ懇談でLGBTなど性的少数者や同性婚カップルをめぐり「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言した荒井勝喜・首相秘書官の更迭の後遺症は大きいのか。
記者D:荒井秘書官が問題発言した日、各社の総理番の若手記者たちは「今のはマジでやばくない?」「さすがに報じたほうがいいかな」と相談していたから、現場レベルではみんな問題意識を持っていたけど、どう扱ったらいいかわからなかった。報じたのは毎日1社。毎日では署名記事を書いた官邸キャップの高橋恵子記者にオフ懇メモが上がった段階で報道すべきと判断したようですが、ある社は記者がキャップに情報を上げるのが遅れて、まわりからオフ懇の内容を聞いたキャップが「なんで報告しないんだ!」とかなり怒っていた。それでも知った上で書かないという判断になった。荒井氏が改めてオンで会見をする前の段階で、毎日の後追い報道したのは共同通信と北海道新聞だけでした。
司会:朝日は記者が懇談に出ていなかったと書いている。本当なのか。
記者C:朝日は総理番記者が3人いて、囲み取材には毎日参加していたが、その日だけ3人とも別の取材に行っていたようです。人手不足だからスクープを逃したんじゃないかな、と。
記者D:荒井さんは以前から、暴言集を作りたいくらい暴言を連発していたが、口が軽いから若い番記者からはネタ元として重宝がられていた。だからこれまで問題発言が報じられなかった。今回は毎日の女性記者が、この発言は許せないとなったようだが、先陣を切るなら毎日だろうなとは社風からして予想はつきましたね。
記者B:でも、毎日がオフレコ協定破りしたことを「こう決断した」とやたら自慢げに書いたことで他社の反発も大きい。
記者C:そういう空気はありますね。あの一件以来、他の秘書官たちの口が重くなって、他の番記者から「みんなのネタ元だった荒井さんがあの記者のせいで」と陰口を言われている。
記者D:オフレコ破り報道後、自民党の小物の議員ほど「(オフレコ破りをされて)書かれちゃうから話せないなぁ」なんて口にするようになりましたからね。
(第3回につづく)
※週刊ポスト2023年3月10・17日号