トルコの大地震は世界中に衝撃を与えた。そして知ってのとおり、日本もまた地震大国。同じ規模か、それ以上の大地震がいつ起こるとも限らない。起こりうる被害を予測しておく必要があるだろう。【全4回の第3回。第1回から読む】
そもそも、何月何日にどれほど大きな地震が来るかなど、誰にもわからない。わかったとしても、地震が起きることを防ぐすべはない。しかし、過去の膨大なデータやそれを解析する研究により、どんなことが起こりうるか予測することはできる。
東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定の見通しを10年ぶりに更新した。最大の被害が想定されるのは「都心南部直下地震が冬の夕方、風速8mの状況下で起きた場合」で、約3600人が地震の揺れによって、約2400人が火災によって死亡すると予測されている。東京工業大学教授の山中浩明さん(地震工学が専門)が言う。
「現時点でもっとも起きる可能性が高いのは『南海トラフ巨大地震』。M8〜9の大地震が今後30年間のうち70%程度の確率で起こるとされています」(山中さん)
南海トラフ巨大地震は東海地震・東南海地震・南海地震が連動して起きると考えられており、ひとたび起きれば宮崎から静岡までの広範囲に津波が押し寄せるとされる。恐ろしいのは、それだけではない。1707年10月に起きた宝永地震は南海トラフ巨大地震だったとされるが、なんとその49日後、富士山が噴火しているのだ。武蔵野学院大学特任教授で地震学者の島村英紀さんが言う。
「噴火のわずか2時間後、江戸に火山灰が降り注ぎました。富士山から東京までは約95km。つまり、南海トラフ巨大地震が起きると、高確率で東京に火山灰が降ることになるのです。特に、秋から春にかけては季節風で東京方面に灰が向かいやすい。火山灰はガラス質の細かい粉で、吸い込めばほんのわずかの量でも肺炎のリスクが高まるほか、飛行機のエンジンの故障やパソコンの破損を引き起こす可能性もあります」(島村さん・以下同)