CTやMRIでは撮影が難しい0.5ミリ以下の細い血管を3Dで可視化できるのが光超音波イメージング装置だ。医療被曝や造影剤もなく、リアルタイムでモニターに血管画像を映し出す。この検査機器の臨床研究では、がん手術でリンパ節を切除した症例に多発するリンパ浮腫の血管と、リンパ管の吻合成功などが報告された。昨年に保険適用、今年から臨床現場での導入が始まる。
ヒトの血管の総延長は約10万キロで、大半は微小血管だが、CTやMRIの画像診断では太い血管しか撮影できない。微小血管の障害を詳細に見ることは難しく、これを可能にするため、2008年より研究が始まったのが光超音波技術だ。その後、内閣府の革新的研究開発推進プログラムに採択、昨年の秋には光超音波イメージング装置LME-01が保険適用となった。
開発に携わった株式会社Luxonus(川崎市)の取締役CTOの八木隆行氏に、メカニズムについて聞く。
「光超音波は光エネルギーを音に変える技術です。体に光を当てると、血管内の赤血球が光を吸収し、熱膨張後に収縮。この運動により、音波が発生します。例えば池に石を投げ込むと、波が水紋となって広がるのと同様に、この装置も光を使い超音波を発生させ、検出機がそれをキャッチし、モニターに3D画像として映し出される仕組みです」
ベッド型装置の中央付近には水を張った撮影エリア(18センチ×29センチ)があり、その下側に512個のセンサーが取り付けられた超音波検出機が設置されている。手など撮影する部位を撮影エリアに乗せ、スキャンを開始すると、超音波検出機の中心部から近赤外レーザー光が照射、体内で発生した超音波をキャッチしてモニターに微小血管を映す。
レーザーは2つの波長を同時に照射しているため、動脈と近接して走る静脈を区別して見ることも可能だ。ただし、光が届く深さ約2~3センチまでは検査可能だが、骨や腱は超音波が通りづらく、画像が得られにくい。
同社代表取締役で、慶應義塾大学名誉教授の相磯貞和氏に、臨床での活用法を聞いた。
「がんの周囲には腫瘍血管という細く曲がりくねった血管が発生することが知られていましたが、この装置で初めて確認できました。0.2ミリ程度の微小血管が見えるので、糖尿病による下肢血流障害の早期発見が期待でき、脚切断の予防にも繋がると思います」