昨年より注目を集め続けている「宗教2世」の問題。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)では自由な恋愛を禁じられ、信者間での「祝福結婚」が推奨されるなど、婚姻の相手についても大きな制約があった。合同結婚式で結婚した両親のもとに生まれた小川さゆりさん(27)は脱会後、旧統一教会信者ではない一般男性と結婚したが、結婚までの道のりは容易なものではなかった。現在の夫が初めて小川さんの両親と対面したときの様子を、3月7日に刊行された手記『小川さゆり、宗教2世』で明かした。
熱心な信者だった小川さんは脱会後、旧統一教会信者ではない現在の夫と出会い、実家を出て両親のもとから離れていた。両親と同居していた祖母が体調を崩したタイミングで、小川さんは初めてパートナーとともに実家の両親のもとを訪れた。
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■「私たちは無宗教です」ときっぱり伝えた夫
私は夫を紹介する意図はありませんでしたが、両親は結婚相手を連れてきたと受け取ったようでした。両親は初めて会った彼に対して、「あなたは人生の目的や結婚観について考えたことはあるか」と問いかけました。
その言い方が何だか教会での説教のように聞こえて、宗教を信じていない彼に対する接し方として違和感がありました。統一教会ではサタン世界の人と付き合うことは許されません。「神の子」として生まれた祝福2世であれば尚更なのでしょう。だけど、私は脱会の意思は両親に伝えています。
「私たち統一教会の人間は、一般的な結婚とは全く違う。本当の幸せを求めた結婚をしていて、たったひとりの人と愛し合って結婚する。それはしかも、神様に認められた本当の結婚なんだ」
だから私たちにも祝福結婚を受けてほしい、と父は言いました。両親にとって私たちが祝福を受けて結婚することは、何よりも重要なことだったのでしょう。教会では「連帯責任論」が説かれていて、家族のひとりが堕落してしまうと、その本人だけでなく家族の皆が天国に行けなくなってしまうと教えられてきました。
その頃の私たちはまだ付き合っているだけの段階でしたが、祝福結婚は統一教会の信者でなければ受けられません。祝福を受けるということは、夫も教会に入会させられることを意味しました。
ただ、父にそう言われた夫は、こうきっぱりと伝えました。
「そういう考えがあってもいいと思いますが、私たちは無宗教だし、教会での結婚式を受けようとは思っていません」
■「血統が転換される聖酒」を冷蔵庫から取り出して……
翌日、昼食を食べた後にまた4人で話す時間がありました。夫については「こんなにまじめな好青年は少ないと思う」と気に入ってくれたようでした。一方で、両親はあらためて「大事な娘だから、結婚するなら祝福結婚をしてほしい」と繰り返しました。
このとき信じられないような出来事がありました。
「出会えた証に乾杯しよう」
父が言って目配せをすると、母が冷蔵庫に何かを取りに行ったのです。そうして出されたのが統一教会の「聖酒」でした。