超満員に膨れ上がった東京ドームに『君が代』が流れる。「プレーボール」の声がかかると、大観衆が侍ジャパンのプレーに熱狂し──。3月9日、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次ラウンドの日本戦。昨年のサッカーW杯に勝るとも劣らない興奮が列島を覆う。振り返れば、過去4回のWBCは激闘の連続だった。
2006年の第1回大会は韓国に連敗、アメリカにも「疑惑の判定」と呼ばれる大誤審騒動の末に敗れた。しかし、土壇場で踏みとどまった日本は準決勝で韓国、決勝でキューバを下して初代世界一に輝く。
2009年の第2回大会は準決勝でアメリカを破り、決勝で宿敵・韓国と対戦。在米韓国人が大挙して駆けつけ、球場が異様な雰囲気に包まれる中、それまで不振を極めていたイチロー(49才)が延長10回に目の覚めるようなタイムリーヒットを放ち、日本は歓喜の2大会連続優勝を果たした。だが2013年の第3回大会、2017年の第4回大会はともに準決勝で敗退し、世界の壁の高さを思い知らされた。
「日本が3大会ぶりの優勝を目指す今大会は、各国の本気度が違います」
そう語るのはスポーツライターの友成那智さんだ。
「これまでは日本と韓国のみがWBCに必死でしたが、今大会は『メジャーリーグこそが世界一の野球』と高みの見物だったアメリカが以前にも増して力を入れています。というのも現在アメリカはサッカー人気が高く、野球のテレビ視聴率を上回る勢い。焦ったメジャーリーグ機構は野球人気をテコ入れするため、超一流選手をWBCに出場させて本気で優勝を狙っています。ドミニカやメキシコも優勝候補です」
強豪を迎え撃つわれらが侍ジャパンも、「過去最強」と呼ばれる布陣だ。宮崎合宿から取材を続けるスポーツ紙記者が語る。
「大会直前にカブスの鈴木誠也(28才)が左脇腹痛で離脱したのは残念でしたが、史上最年少で三冠王を獲得したヤクルト・村上宗隆(23才)や巨人の若き主砲・岡本和真(26才)、昨シーズン完全試合を達成したロッテ・佐々木朗希(21才)など日本球界を代表するメンバーが揃いました。特筆すべきはその若さで、平均年齢27・3才と侍ジャパン史上最も若い。エネルギッシュで元気なチームになりました」
なかでも格別なのが、2人のメジャーリーガーだろう。大リーグ評論家の福島良一さんが語る。
「やはりキーマンはエンゼルスの大谷翔平(28才)とパドレスのダルビッシュ有(36才)。2人とも強者揃いのメジャーリーグで群を抜く成績を残し、実力は世界一級品です。大谷もダルビッシュも日本代表として世界一を目指すことにかけては、普段のメジャーでの戦いとは異なる特別な思いがあるでしょうね」
ダルビッシュがメジャーに旅立った翌年にドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団し、「背番号11」を引き継いだ大谷。今回の侍ジャパンで初めてチームメートとなる2人のキーマンは、どんな景色を見ているのか。
※女性セブン2023年3月23日号