3月12日に初日を迎える大相撲3月場所では、先場所12勝3敗で優勝した大関・貴景勝が綱取りに挑む。貴景勝は昨年の11月場所でも12勝をあげて優勝同点(巴戦で阿炎が優勝)だった。過去に「優勝同点→優勝」ながら横綱に昇進できなかった大関は初代若乃花、三代目若乃花の2人がいるが、いずれも直後の場所での綱取りには失敗している。不吉なデータがあるなか、貴景勝には今場所終盤で「巨大な難敵」が待ち構えているかもしれない。
21歳の新入幕力士・北青鵬である。元横綱・白鵬率いる宮城野部屋の力士で、身長2メートル4センチ。身長・体重を公式に測るようになった1953年9月場所以降の新入幕力士では、元横綱・曙や元大関・琴欧洲(現・鳴戸親方)と並ぶ最長身力士となる。若手親方のひとりはこう言う。
「押しもできて、そのうえ四つ相撲が得意な力士です。右でも左でも、上手を取れば威力を発揮する。小兵力士を育ててきた白鵬が初めて手掛けた大型力士。序ノ口デビューから21連勝という高卒力士では歴代1位の記録を樹立している。今場所は東前頭15枚目で、普通なら大関とは対戦しないが、北青鵬の力なら平幕優勝も狙える。最近の終盤戦では番付を無視して優勝争いをしている力士同士をぶつける取組編成が目立つので、双方が星を伸ばせば貴景勝との直接対決もあり得ます。
北青鵬が所属する宮城野部屋は現在、元関脇・高見山が創設した旧・東関部屋の建物に入っており、奇しくも曙が入っていた個室を北青鵬が使っている。かつて曙が貴景勝の師匠である元横綱・貴乃花の前に立ちはだかったように、“令和の曙”が貴景勝の刺客になる可能性はある」
北青鵬はモンゴル生まれだが、「1部屋につき外国出身力士は1人まで」という相撲協会のルールの適用対象ではない。母の語学留学のために5歳で来日し、以後は北海道・札幌で育った。相撲担当記者はこう説明する。
「6歳の時に札幌巡業で白鵬と出会ってから相撲を始め、白鵬の紹介で中学から鳥取に相撲留学しました。高校は鳥取城北高に進み、卒業後は2020年3月に白鵬の内弟子として宮城野部屋に入門した。モンゴルから日本へ来て10年以上経っているため、外国出身力士として扱われない“例外規定”の適用対象になるのです」