高度な情報化にしても価値観の変容にしても、われわれは難しい時代を生きている。コラムニストの石原壮一郎氏が「基本」について考察した。
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そりゃまあ、専門家のみなさんとしては、いちおうなんか言っておかないと、自分たちの存在意義がなくなってしまいますよね。
3月8日、厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の有志らが、5月に新型コロナの分類が「5類」に引き下げられたあとの身近な感染対策として、新たに「5つの基本」を示しました。その内容は、以下のとおりです。
●体調に不安や症状がある場合は、無理せず自宅で療養するか医療機関を受診する
●手洗い
●適度な運動と食事
●3密(密閉、密集、密接)の回避と換気
●その場に応じたマスク着用やせきエチケットの実施
さすが専門家! 斬新で目からウロコが……と申し上げたいところですが、「まあ、そうですよね」というか「知っとるわ!」というか。基本とはそういうものかもしれませんけど、「新型コロナ」を「インフルエンザ」に入れ替えてもそのまま使えます。
脱力している場合ではありません。人生は日々是学びです。感染対策という点では新たな学びはありませんでしたが、あらためて勉強になる部分はたくさんありました。
「もっともらしい提言をすれば役割を果たしているように見える」「専門家の提言に新鮮さやオリジナリティは必要ない」「それぞれの行為に効果があるかどうかは気にしなくてもいい」といった暗黙のメッセージは、仕事や地域の活動にも応用できそうです。
せっかく頭をひねってくださった専門家のみなさまに敬意を表して、コロナ対策の「5つの基本」を踏襲しつつ、会社生活の「5つの基本」を作ってみました。
●実現に不安や反対意見があるプランは、無理せず寝かせるか誰かに丸投げする
●自分の手は汚さない
●適度な根回しと忖度
●3ハラ(セクハラ、パワハラ、マタハラ)の回避と管理
●その場や相手に応じたマナーの実践やエチケットの実施
これらの基本を守っていれば、中途半端な野心や己の生き方への疑問といったタチの悪いウイルスに感染することもなく、余計なリスクを背負うこともなく、安全で健やかな会社生活を送れるでしょう。