政府の地震調査委員会は、マグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震が今後30年以内に70~80%の確率で発生するとしている。巨大な揺れに伴い、北は首都圏から南は九州まで、高さ10メートル以上の巨大津波を引き起こす恐れがある。
津波対策として富士通が取り組むのが「リアルタイムAI津波予測」だ。従来の予測では海岸線の津波高が公表されてきたが、この技術ではAIとスーパーコンピュータ「富岳」を用い、内陸部の津波浸水まで瞬時に予測できる。同社研究本部主席研究員の大石裕介さんが語る。
「例えば高い建物があると、それが障害物となって周辺の津波浸水は高くなります。『津波はここまで来ないだろう』と考えるのではなく、内陸部の浸水予測をリアルタイムに知り、避難して命を守るための技術です」
同社は各地で避難訓練を積み重ね、参加住民の声を技術に反映してきた。
「従来は専用アプリをダウンロードして予測を見る必要がありましたが、アプリに馴染みが薄い方もいらっしゃるので、今年2月の神奈川県川崎市での訓練ではアプリ不要のホームページに切り替えました」
予測の精度と利用者の利便性を向上させ、同技術の実用化を目指す。
写真/富士通提供
※週刊ポスト2023年3月24日号