北朝鮮で2月、金正恩朝鮮労働党総書記と妻の李雪主夫人のツーショットを中心とした約100ページの写真集が発行された。写真集には、2人が雪の降るなかで仲睦まじく焚火に当たり談笑している写真などが収められており、「尊敬されるファーストレディ」として党員の学習会などの教材として使われていることが明らかになった。
金氏とともに、李氏の神格化を目的とした写真集だとみられるが、李氏がかつて党や軍、金ロイヤルファミリーを称える流行歌手だったことは良く知られており、民衆の反応は芳しくないという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
この写真集は北朝鮮の革命の聖地である中国との国境地帯の「白頭山」で撮影されたもので、金氏と李氏が朝鮮人民軍兵士らを激励している写真が中心だ。中国の習近平国家主席夫妻との記念写真なども掲載されており、北朝鮮の「建国の父」金日成主席から金正恩氏までの3代にわたる「白頭の血統」の重要性を強調している。
北朝鮮メディアは2018年、李氏について、「尊敬されるファーストレディ」と呼び始めた。この呼び名は、金日成主席の妻で「国母」とされる金正淑氏以来使われておらず、これが李氏に使われたことについては、李氏が国母であるという正統性を誇示する狙いがあるようだ。
2018年には、李氏はその存在感をアピールするように、中国訪問や3回の南北首脳会談など、36回の外交行事に金氏とともに出席している。
李氏は2009年に金正恩氏と結婚したものの、金氏の妻として公式に発表されたのは2012年のことだ。この間、3年間のブランクがあるのは、李氏がかつては流行歌手で、「最高指導者の子息とは釣り合わない」とのイメージが民衆の間にあったためとみられている。そのイメージはいまだ民衆の間に残っており、それを払拭し、神格化したい意図が透けて見えるようだ。