横綱・照ノ富士が4場所連続休場となった大相撲春場所だが、綱取りに挑む大関・貴景勝が序盤で2敗と苦しんでいる。平成以降、11人の横綱が誕生したが、5日目までの序盤に5戦全勝で横綱に昇進したのが8人、4勝1敗では3人。3勝2敗で昇進したケースはない。年6場所が定着した1958年以降で見ても、横綱に昇進した29人のなかで序盤に2敗を喫した力士はいない。
3月場所の最大の焦点は押し相撲一筋の貴景勝の綱取りだったが、3日目に早くも2敗してしまったことで相撲協会内でも諦めムードが漂っているようだ。大関候補も同様に苦しい星勘定になっている。7場所連続で関脇の地位を守っている若隆景は初日から5連敗。関脇4場所目で7場所連続三役の豊昇龍も2勝3敗と黒星が先行。先場所11勝を挙げて関脇に昇進し、大関の足がかりにしたい霧馬山も序盤に2敗となった。
5日目まで勝ちっ放しは4人。平幕優勝の経験がある小結・大栄翔、昨年11月場所に優勝同点ながら巴戦で敗れた高安、そして錦富士と翠富士の伊勢ヶ濱部屋コンビだ。元横綱・白鵬(現・宮城野親方)の愛弟子で身長204センチの北青鵬が4日目まで無傷となるなど、スポーツ紙が日替わりヒーローを取り上げる戦国場所となっている。
「1横綱、1大関」という125年ぶりの異例の番付のなか、次の大関誕生は協会にとっても悲願の状況だ。1月場所は4関脇4小結、今場所は3関脇4小結と三役を“増産”して抜け出す力士が出てくる展開を期待したものの、今のところ成績的に飛び抜けた存在がいない。興行である大相撲はヒーローでも悪役でも話題の力士がいてこそ盛り上がる。では、相撲協会は誰を“看板力士”として推したいのだろうか。
それを考えるうえでのヒントとなるのが、協会公式グッズに“顔”として紹介される面々だ。本場所が開催されているエディオンアリーナ大阪の館内には、相撲協会の公式ポスターが貼られているが、そこには貴景勝、若隆景、若元春、遠藤、阿炎、宇良、翔猿、翠富士の写真が載っている。相撲協会の公式オンラインストアのポスターには御嶽海の姿もある。一方で、横綱・照ノ富士の姿はどこにも見当たらない。