高血圧と診断され、降圧剤を服用するようになってもなかなか数値が改善しない。医師からは「効いていないのでお薬を増やしますね」と、また種類が増えていく──。こうした悩みに直面する人は多いはずだ。しかし、その原因は生活習慣ではなく、あなたが服用している「別の薬」にあるかもしれない。銀座薬局代表の長澤育弘薬剤師が語る。
「実は多くの薬で、『血圧を上げる』副作用があります。代表的な例ではコロナ禍で発熱した際に使用された解熱鎮痛薬です。頭痛でロキソニンやイブプロフェンを飲んでいるのに、血圧が上がってしまうことが原因でまた頭痛を引き起こす。この“負の連鎖”によって状況が好転しないまま長期にわたって服用されるケースがあります」(以下、「 」内は長澤薬剤師)
高齢になるにつれて血圧だけでなく、血糖値やコレステロールなども上がっていく。それに伴って、何種類もの薬を服用する「多剤併用」の問題は社会全体の課題になっている。
厚労省の調査(2018年)では、75歳以上で7種類以上の薬を飲んでいる人の割合は24.8%に上るという。また2021年11月には米国医師会発行の医学誌『JAMAインターナル・メディシン』に、高血圧患者の5人に1人がほかに服用している薬の副作用によって症状を悪化させている──という論文が掲載された。
長澤氏はそうしたリスクは「身近な薬にも潜んでいる」と指摘する。
「高血圧患者が併用することが多い糖尿病治療薬や脂質異常症治療薬など生活習慣病の薬のなかにも血圧を上げる薬はあります。また抗精神病薬や抗うつ薬は副交感神経が抑制される『抗コリン作用』を持つ薬が多く、頻脈や血管収縮を起こすことで血圧が上がります」
こうした薬は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページに公開されている医療医薬品の添付文書の副作用の欄に「高血圧」「血圧上昇」などと記載がある。
本誌・週刊ポストは長澤薬剤師監修のもと、そうした記載がある有名薬を抽出し、一覧表に示した。