二〇二〇年の大ヒット映画『鬼滅の刃 無限列車編』の主題歌「炎」の作詞は梶浦由記氏と歌手のLiSAとの共作としてクレジットされている。実際にどのように創作は進められたのか、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が梶浦氏に聞いた。
* * *
梶浦:今回、はじめに私が一回全部書いたんです。でも、我ながらすごく悲しくなってしまって。映画化された箇所は原作を読んでるときに、そちらの気持ちで読んでいたんです。この歳になると、親しい人を何人も亡くしているので、いろんなことを思い返してしまって……。それもあって、歌詞には悲しみが強めに出ていました。
前向きさよりも悲しみにすごく寄っちゃったなと思いながら歌詞を提出したら、やっぱりスタッフの方々から「もうちょっと前向きにしたい」と。私も「そうだよね」と思い、そこからLiSAさんに手伝っていただきました。
LiSAさんは「子どもも見る作品」という点を大事にしていました。「見終えた子どもを悲しい気持ちにさせないほうがいいんじゃないかと思います」とおっしゃって、前向きな気持ちを足してくださった。結果、すごくよくなったなと思っています。共同作業にさせていただけたのは本当にありがたかった。
――お二人の異なる視点が入っていることになりますが、実際に歌を聴いても違和感はありませんでした。
梶浦:そこはLiSAさんが元の歌詞を非常に汲んでくださったからですね。読解力も発想力もある方ですから。もともとLiSAさんって、すごくいい歌詞を書かれるので、私、すごく好きなんです。あれだけいい歌詞を書く方なので、別にどこを直していただいても、私のほうも不安はなかったです。
LiSAさんもすごく原作への理解が深くて、特に「あの話は一番好きなエピソードだ」とおっしゃっていたので、そこに対するご自身の気持ちも入れたかっただろうと思いますし、そういった意味で、とてもいい共作にさせていただけたなと思っています。