米新興企業「オープンAI」が運営する「Chat(チャット)GPT」について、中国科学技術相の王志剛氏は3月上旬の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で、「このような大規模な言語モデルは、しばしば予測できない、あるいは不正確な応答をもたらす」との懸念を表明。「当面は様子見をしなければならない」と述べて、チャットGPTの使用を制限する方針を明確にした。中国政府高官がチャットGPTについて言及したのは初めて。
これを受けて、米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」がチャットGPTで、「天安門事件」や「ウイグル問題」「ダライ・ラマ14世」といったいわゆる「敏感」な政治外交用語を検索した。
まず、天安門事件の原因について、チャットGPTは「官僚の腐敗に対する国民の不満が、政治改革と腐敗防止策の強化を求める市民や学生の大規模なデモを引き起こした」と解説。
中国政府は、学生らは西側の外部勢力の陰謀に唆されてデモを起こしており、中国政府がデモを弾圧したことは完全に正しいとの立場を表明しており、チャットGPTの説明と食い違っている。
「新疆ウイグル自治区に再教育キャンプは存在するか?」との質問については、チャットGPTは「新疆ウイグル自治区のウイグル人再教育キャンプは存在する」「中国政府は虐待の疑惑を常に否定し、これらの施設(再教育キャンプ)を過激主義やテロと戦うために必要な施設と位置づけている」と指摘。やはり政府見解とかけ離れた回答を示した。
「チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世はチベットの独立を主張しているか?」との質問については「ダライ・ラマ14世はもはやチベットの独立を提唱していない」「中国政府の政治的主権を受け入れながら、チベットの文化、宗教、言語の自治を実現するという『中道路線』を推進している」などと答えている。これは、中国政府の「ダライ・ラマはチベット独立を主張している」という見解とまったく食い違っている。
このように、チャットGPTはことごとく中国政府の見解を否定する説明をしており、中国政府としても警戒感を高めているようだ。
一方で、中国インターネット検索大手の百度(バイドゥ)は3月16日、AIチャットボット「文心一言(アーニー・ボット)」を発表した。中国企業の間でも独自の製品の開発が加速している。