旧統一教会が日本で社会問題になるなか、お隣・韓国でも宗教を巡る事件が起きていた。かつて、おぞましい性犯罪で刑に服したカルト教団の教祖・鄭明析が、再び鬼畜の所業を繰り広げていたのだ。【前後編の後編。前編から読む】
見抜く方法はない
摂理は現在も日本で着実に信者を増やしている。霊感商法被害救済担当弁護士連絡会の事務局長で、長く摂理の問題を追及してきた渡辺博弁護士が語る。
「コロナ禍でキャンパス内での勧誘活動が行き詰まり、昨今はSNSを利用した勧誘に力を入れています。一流企業や官公庁、法曹界まであらゆる業界に信者がおり、社会的ステータスの高い人を呼んだ講演会を開いて勧誘の場とすることもある」
いずれも摂理であることを隠してターゲットに近づくため、見抜くのは至難だと渡辺氏は続ける。
「例えば新入生に、“授業の履修について相談に乗るよ”などと近づくので、勧誘の入口段階で摂理だと見抜く方法はありません。知らない人が近づいてきたら信用しない、というスタンスで臨むしかないのが実情です」
摂理が根を張り巡らせるほど、被害者が生まれていく。そんな構図が続いてきた。
「鄭が出所後に犯した性犯罪について、明るみに出ているのは氷山の一角でしょう。2018年以降も多くの日本人女性信者が鄭の元に呼ばれており、その中に性被害に遭った女性がいることを私は把握しています。日本は韓国に比べて性被害者が声を上げる環境が整っていないので、表立って訴えづらい現実がある。これを変えていかなければならない」(渡辺氏)
鄭の一連の性犯罪について摂理の日本本部に聞くと、こう答えた。
「ドキュメンタリーの内容の真偽について調査中ではありますが、明らかに虚偽の証言が数多く確認でき、鄭明析牧師に対する疑惑について裁判所で審理されている中で、検証されていない内容が一方的にドキュメンタリーとして、過剰な演出がなされたうえで制作されたことに強い憤りを感じております」(事務局)
過去に有罪判決が確定した鄭の性犯罪については、「現場検証をせずに韓国の司法当局は有罪判決を下した、という事実をもってしても韓国での鄭明析氏に対する実刑判決は容認できず、理不尽極まりないと考えています」(同前)とした。
鄭は現在、大田地裁で進む裁判で「性行為を強要したことはない」と容疑を否認。『すべては神のために』の配信については、「宗教の自由を棄損する」と配信停止の仮処分を求めた(申請は裁判所が棄却)。
新たな被害者を生んではいけない。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2023年3月31日号