中国が南シナ海に面するカンボジアの沿岸部にあるリアム海軍基地の整備に協力し、中国軍の秘密基地として軍事利用する──との両国間の密約説が報じられている。
中国は台湾や東南アジア諸国と南シナ海の島嶼の領有権で対立しているほか、南シナ海の航行の自由を主張する米軍の動向を警戒、さらに台湾への軍事侵攻も計画しているとみられるが、中国軍がカンボジアの基地を秘密基地として活用できれば戦略上大きな意味を持つ。
米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が入手した衛星写真専門企業「プラネット・ラボ」の最新の衛星画像では、タイとの国境地域にあるカンボジア・シアヌークビル県のリアム海軍基地周辺の景観が大きく変化し、新しい建築物が建てられたり、大規模な整地が行われたりしていることが一目瞭然となっている。
開発プロジェクトが始まったばかりの2022年7月1日のグーグルアースの画像と比較すると、24ヘクタールの海軍基地敷地内には現在2つの新しい桟橋が建設されたほか、基地の中心部には、セメント工場のような新しい建造物がいくつも建てられている。
さらに、基地内には艦船が停泊するドックや滑走路、病院、軍の司令部や宿舎、そのほかいくつかの建物や道路も建設されている。また、開発業者が基地の南側を埋め立てており、新たな軍事施設の建設も予定されているようだ。
これについて、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」はすでにカンボジア政府が中国政府に対して、「中国軍に基地の一部を使用させる密約を結んだ」などと報じたが、カンボジアは「外国に基地を独占的に軍事利用させることは、カンボジアの憲法に反する」として、密約説を繰り返し否定している。
海軍基地は、ベトナム南部のフーコック島からわずか30キロしか離れておらず、ベトナムと島嶼の領有で対立する中国にとってはベトナムの動きを牽制するには格好のロケーションだ。
さらに、中国の建設業者が海軍基地から60キロしか離れていないダラ・サコール国際空港の建設契約を受注しており、米軍事当局は中国が空港を軍事的に利用する可能性があるとしてカンボジア側に確認を求めたが、カンボジア政府は拒否しているという。
カンボジアのフン・セン首相が2月初め、北京を公式訪問し、習近平国家主席と会談し、中国がカンボジアの「国家主権と安全保障」を継続的に支援することを再確認しており、両国の軍事基地をめぐる密約説はますます信ぴょう性を帯びている。