放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次ラウンド終了後のタイミングで、爆笑問題の太田光について綴る。
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WBC4連勝の興奮のままこれを書いているが、当初は「ヌートバー」の名前がみんな覚えられなかった。きこえてくるのは、「ホラッ、アメリカの侍ジャパン。チョキじゃなくて?」「グーとパー」。「違うよ。ピンク色の夫婦みたいな?」「ペーとパー」。「写真撮れ。ホラ裸でハイボール飲んでるみたいな名前」「ヌードバー」。「摘発されてろ」と大混乱。大活躍のお陰で名前も覚えたし、お母ちゃんのゆかいなキャラクターも日本中に知れ渡った。
そして何たって大谷のホームランである。自分がCMをつとめる広告看板直撃。翌日、スポニチの一面見出しがみごと。「大谷看板役者弾」。相当な芸能への造詣の深さである。他紙はすべて「看板弾」。“看板役者”という言葉をチョイスするところに侍ジャパンの意味がある。二刀流というエンタメ歌舞伎なのだ。昔はといえば「かんばんわ」と言えば「森進一です」だったのが今は「看板は?」大谷である。
私も宮本武蔵以来様々な二刀流をこの目で見て確かめてきたがもう一度「五輪書」から読み返し、大谷の偉大さを噛みしめようと思っていたところへ……オオタニとたった一文字違いでとんでもない二刀流が現われた。その名は爆笑問題のオオタである。あれだけテレビとラジオ、そしてライブをやっている最中、家へ帰ってはコツコツと小説の執筆をしていたのだ。評論家なぞにはなり下がらず、常に生み出し、クリエイティブしつづける頼もしき後輩である。「芸能」と「文化」の二刀流。太田……いやっ今日からは太田先生、太田文豪と呼ばせて下さい。
530ページを超える超大作、普通なら上下巻と2冊にするボリュームの原稿を2段組みでこの厚さである。当初は映画にしようとシナリオ化したようだが、それが叶わず小説に仕立て直したというこの努力の結晶。4年、5年という歳月をかけて書きあげた『笑って人類!』(幻冬舎)。この創作力・熱量すべて文句なし。肝心な中味は……すまんWBC終わったら読み始めるわ。
帯には「世界の平和のため、ダメダメ総理が獅子奮迅!?」とある。太田先生からそっと手紙が添えられてあって「イメージとして“社長漫遊記”です」と嬉しいツボを突いてくる。「そこに“無責任シリーズ”と“ローマの休日”を合体させました」。映画青年太田先生の面目躍如である。森繁がのり平が植木等とオードリー・ヘプバーンが躍動する。ああもう読んじゃおう。
※週刊ポスト2023年3月31日号