3月22日、桜がほぼ満開を迎えた平日の昼下がり。コロナの影響で4年ぶりのお花見解禁となった東京・上野恩賜公園は、大勢の人で賑わっていた。桜通りはシートなどを敷いての飲食などは禁止となっているが、サラリーマンやカップルが行き交い、お酒や飲み物片手に桜を愛でる姿が見られた。
この日は午前中に侍ジャパンがWBC優勝を決めたばかりだったが、優勝が決まった瞬間も各々が「おお~」と声を上げる程度で、ハメを外して騒ぐ人はほとんどいなかった。シートを敷いてお菓子やお茶を飲む、20代のOL4人組はこう話す。
「酔っ払いのおじさんとかが多いのかなと思ったら、みなさん意外と大人しく飲んでいるので、なんだか安心しました。でも夜になると少しは雰囲気違うのかな。明るいうちに帰ろうと思います」
思い思いに時を過ごす人たち。お酒が回ったのか、シートの上で脚を絡めて抱き合い、眠ってしまっている中年のカップルもちらほら見られた。
17時30分頃から、客層に変化が見られるようになった。仕事帰りのサラリーマンが増え、10人以上の規模の一団も。が、特に大声は出さずに談笑している様子で、20時近くになると、ゴミやシートを整理して行儀よく解散していった。
19時頃公園を訪れたという50代の男性は、缶ビールを片手に桜通りを散策していた。「昔のようなどんちゃん騒ぎはなくなったんだねえ」とどこか寂しそうに話す。
「僕も若い頃は会社の同僚と20人くらいで花見に来たけど、当時はビールの瓶を箱で持ってきて、みんなでラッパで飲んでいた。隣の組の客と一緒に騒いだり、年に一度の無礼講みたいな雰囲気があったんだよね。鎌倉時代から庶民は桜を見てお酒を飲んで騒いだんでしょ? 今はゴミも散らかさないし、みんながめいめいおとなしく楽しむ時代になったんだね。
僕もこうやって1人で来てるしね。4年ぶりの解禁だけど、特に誰かに誘われたというわけでもないから。どっちが幸せというわけでもないけど、こういう時代になったということだね」
19時半頃から公園の管理人らのパトロールが始まり、20時に電灯代わりの提灯の灯りが消えた。名残惜しそうにシートでお酒を飲む客もいたが、21時には皆が満足そうな顔で引き上げた。
穏やかなお花見──3年間の自粛期間は、宴会のスタイルを変えつつあるのかもしれない。