結成16年以上の漫才師に“セカンドチャンス”を――。そんな意図で設立された新たなお笑いコンテスト「THE SECOND~漫才トーナメント~」の選考会が2月に終了し、全133組の出場者から次のステージに進む32組が決まった。ふるいにかけられた101組ものベテラン漫才師のなかには、世間的な知名度が伴わなくとも爆笑をかっさらったコンビも多かった。『笑い神 M-1、その純情と狂気』の著者でノンフィクションライターの中村計氏が、選考会の様子をレポートする。
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先日、ある芸人を取材していたとき、話の中に聞いたことのないコンビ名が出てきた。
「ニジノタソガレ、わかりますよね?」
「わかります」
話の腰を折りたくなかったのと、見くびられることを恐れ、反射的にそうしらばっくれた。
ただ、話の流れから、知る人ぞ知るアブナイ人たちなのだろうなということは推測できた。
一度聞いたら忘れられない響きだったため、2月15日に開催された「THE SECOND」の選考会、初日・第一部の香盤表に「虹の黄昏」の名前を見つけたとき、すぐに例のコンビだとわかった。
虹の黄昏は、10分休憩の前、前半9組の最後に登場した。彼らが前半のトリを任された理由は、芸風を見て、すぐに理解できた。
上半身裸の上に上着だけ羽織った姿で登場した2人は、わけのわからないことを絶叫し、いきなり観客をイジり倒した。まるで、運悪く遭遇した海賊か山賊のようだった。粗暴で、理不尽で、非道徳的だった。
彼らの漫才は、わかりやすく言えば、大音量のパンクロックだ。彼らの後に「演奏」する組からしたら、やりにくくて仕方がない。だから前半の最後に組み込まれたのだ。
彼らのネタは、もはや漫才なのかも判別がつかなかったが、笑えて仕方なかった。2005年に結成した虹の黄昏は、M-1やキングオブコントなど、ありとあらゆるお笑い賞レースに参戦しているようだが、そのほとんどで早々に敗退している。
わからないでもなかった。彼らは、もはやジャンルで括れないし、そうされることを拒絶しているようにも映る。今となっては、虹の黄昏というコンビ名は、2人の未来を暗示していたようですらある。
彼らはTHE SECONDにおいても、選考会で散った。そのことは残念でならなかったが、それはそれで彼らの笑いが唯一無二であることの証明にも思えた。
さまざまな賞レースと、THE SECONDが一線を画しているのは、選考会がコンテストの予選という意味合いだけでなく、すでにプロの演芸ショーとして立派に成立している点だ。それもそのはずで、出場者が「プロのみ、かつ結成16年以上」と限定されているため、相応のキャリアと実力の持ち主しか出場していないのだ。
また、THE SECONDのネタ時間は6分と、テレビの賞レースとしては異例の長さだ。そのため通常のコンテストよりも自己紹介を長めにし、自分たちのキャラクターを十分に理解してもらった上でネタにつなげていく組が多く、その緩い空気感がまるで通常の寄席を観ているようで心地よかった。
まだ「売れていない」と自覚する芸人が出場する大会とあって、つかみはやはり自虐系が目立った。「この年齢で、まだ独身なんです」「芸歴と同じくらいバイト歴が長いんです」と客の同情を誘うもの、そして、いきなり「とにかく笑ってください!」と泣き落としにかかるパターンも多かった。