中国福建省厦門(アモイ)市(島)とわずか2kmしか離れていない台湾・金門二胆島に駐留している台湾軍の兵士が脱走し、中国当局に保護されていることが分かった。台湾軍兵士が中国への亡命を求めるのは最近ではまれだ。台湾の中央通信社が報じた。
脱走したのは、台湾軍・金門防衛司令部傘下の黎友守備旅団第二胆守備隊の陳という名字の兵士。台湾の金門区検察院は軍からの届け出を受けて捜査を開始した。陳氏は携帯電話を持参し、3月9日午前5時、軍用ではないライフジャケットを着用して海に飛び込み、アモイまで泳いで渡っており、検察では「陳氏の計画的な行動」とみているという。
検察は陸海空軍刑法違反の疑いで陳氏を指名手配し、近く、台湾の司法省を通じて中国に正式な送還の要請を行う予定であることを明らかにした。
台湾陸海空軍刑法第39条によると、長期にわたり自身の意志で離脱または入営しなかった者は5年以下の懲役となる。また、同法第40条では、理由なく6日以上離脱または入営しなかった者は3年以下の懲役と定められている。 金門区検察院は、この件の時効は20年であると発表している。
台湾紙「聯合報」によると、台湾の陳玉仁氏・中国国民党立法委員(日本の国会議員に相当)は「陳氏がアモイで無事であり、中国当局は陳氏の家族がアモイで面会することに合意し、陳氏も了承している」と述べている。
しかし、陳氏は「もう台湾に帰りたくない。できれば、アモイで生活したい」と話している。陳氏の家族も無事を知らされているが、まだ直接、連絡をとれていないという。
中国の官製メディアの華僑向け通信社「中国新聞社」によると、陳氏はアモイに到着してから「よく食べ、よく眠り、すべて順調」だという。 また、家族に心配をかけないよう頼んだとも伝えている。とはいえ、直接的な動機などは明らかにされていない。
中台間では、脱走兵はプロパガンダ戦争の勝利とみなされており、厚遇されることが多いという。