優勝決定戦の末に関脇・霧馬山が初優勝を遂げて幕を下ろした大相撲3月場所。昭和以降で初めて横綱・大関が不在という異例の場所となったが、場所後に生まれる状況も異例のものとなりそうだ。大関が“空位”になりかねないという前代未聞の事態に直面している令和の大相撲は、“大関候補”を乱発する状況になってきた──。
1月場所から引き続き125年ぶりの1横綱1大関という番付で幕を開けた3月場所だったが、リハビリ中の横綱・照ノ富士は全休。ひとり大関として綱取りに挑戦した貴景勝は6日目までに3勝3敗となり、7日目から「左膝内側半月板損傷」の診断書を提出して途中休場となった。綱取り場所だった貴景勝は来場所、一転カド番となる。
さらに14日目には番付上、トップ3に位置する東関脇・若隆景まで「右前十字じん帯損傷、右外側半月板損傷」で休場することになり、星ひとつの差で優勝争いをしていた東張出関脇の霧馬山が不戦勝による白星を拾って優勝戦線に踏みとどまることになった。
千秋楽の取組編成にしても、結びの一番が関脇同士にはならず、優勝を争う東張出関脇の霧馬山と東張出小結の大栄翔の対戦となった。「三役揃い踏み」には、平幕力士である西前頭7枚目の高安が登場した。スポンサー企業が各取組に出す懸賞も、休場力士が出て不戦勝・不戦敗の取組になった場合は、当日に協会がスポンサーに連絡して取りやめるか他の取組への振り替えとなるため、対応にてんやわんやの状況が続いた。
「協会サイドも振り替え作業にドタバタでしたが、スポンサー側も困惑していたといいます。優勝力士への『大関賞』を出している大関酒造は、大関の取組に懸賞を出すことが慣例だったが、今場所は7日目から大関が不在となり、結びの一番に懸賞をかけていた」(相撲担当記者)
3月場所は通常開催となったが、場所後の春巡業も4月2日の伊勢神宮奉納大相撲を皮切りに、大阪、愛知、福井、新潟、長野を回って関東周辺の15か所で開催予定だが、看板力士がどれだけ参加できるか不透明な状況だ。