トランプ米政権当時の中央情報局(CIA)長官や国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が3月中旬、米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」のインタビューに応じた。ポンペオ氏は、金正恩朝鮮労働党総書記から直接聞いた話として、金氏がトランプ氏との米朝首脳会談の前後に必ず習近平中国国家主席からアドバイスを受けていたとの秘話を明らかにした。それにもかかわらず、金氏は習氏ら中国について、「中国人はうそつきだ」と語るという場面もあったという。
ポンペオ氏はトランプ氏と会談した金氏について「金正恩総書記が、私たちが思っていたよりもずっとリベラルな人物であったことは間違いない。私は会談当時、金氏については良く知らなかったが、会談で彼の話を聞いていて感心したくらいだ。あるブレーンが『彼はかなり開明的である』と言っていたが、それを会談前に知っていればよかったと思ったくらいだ」と語っている。
金氏がリベラルな人物である背景には、欧州の国際スクールで学ぶなど、さまざまな国々の人々とつきあってきたことや、国際的な問題について深い関心を持っていたことがあると、ポンペオ氏は分析している。
米朝首脳会談自体が決裂したことについて、金氏が会談前後に必ず習近平氏から「指導を受けていた」ことが原因だと、ポンペオ氏は指摘した。
金氏が習氏から指導を受けていたのは、韓国における駐留米軍の問題についてだったという。習氏は米軍の存在を非常に懸念しており、米朝首脳会談で米軍の撤退を持ち出すことを提案した。しかし、金氏は率直なやりとりの場面になると、「実は、私(金氏)は米軍のプレゼンスを個人的には心配していない。朝鮮半島における米軍のプレゼンスを本当に心配しているのは実は習近平氏なのだ」とトランプ氏に告白したという。
結局、ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談は決裂してしまったが、その原因は在韓米軍の存在だったとポンペオ氏は分析する。
ポンペオ氏は「金氏は習近平の完璧な代理人ではなく、中国も北朝鮮を100%支配していないかもしれないが、金氏が習氏の意向を沿うような形で決着をつけた形になったのではないか」と指摘している。
このところ北朝鮮はミサイル発射などの軍事的挑発をエスカレートさせており、米韓軍事演習への対抗策ではないかと指摘されるが、その裏に中国の意図も透けて見えることがポンペオ氏の発言からも窺えるようだ。