2023年3月1日、秋田県立能代科学技術高等学校で卒業式が行われた。式典には卒業生約130人が出席し、それぞれの道へ進んで行った。だが、2年前に学校内で起きたいじめ問題は取り残されたままだった──。
当時2年生の男子生徒が、同級生の女子生徒3人から受けたいじめを苦に自殺未遂を起こした事件。被害男子生徒側はいじめを受けた後も学校が適切な対応を取らなかったとして高校を管理する立場の秋田県に275万円、加害女子生徒3人に連帯して440万円の慰謝料を求めた裁判は、1月から始まった。
同校は2021年4月に能代工業高校と能代西高校が統合。能代工業は人気漫画「スラムダンク」のライバル校・山王工業のモデルとなったバスケの名門校ともされている
事の発端は2020年6月から2021年1月にかけて、当時、能代西高校の1年生だった男子生徒が同級生の女子生徒A子、B子、C子に「死ね」「ウザい」「キモい」と悪口を言われ始めたことだった。加害女子生徒3人の男子生徒への執拗ないじめは、「バイ菌扱いする」「ホースで水をかける」「障がい者だから、やらせとけ」などとエスカレートしていき、2021年2月の深夜、男子生徒は自宅のカーテンレールに縄をかけて自殺未遂を図った。幸いにも大事には至らなかったが、いじめで思い詰めた末の行動だった。
部屋からは男子生徒の遺書が見つかり、直筆で以下の言葉が書かれていた。
《私をいじめた3人へ A子B子C子 君たちは人を殺したんだ。そのことをよく考え一生人を殺したことと向き合い生きていけ 「しね」「きもちわるい」「いなくなれ」こんな言葉をたくさん私に言ってきた君たちは言われている人の気持ちなんて考えなかっただろう。今さら理解なんかしなくていいから『自分の言葉で人が死んだ』このことを肝に銘じろ》
自殺未遂後、3カ月間ほど登校ができなくなり、いじめによるPTSDで通院も余儀なくされた。当初、被害生徒の両親が「同級生によるいじめで登校できなくなった」と学校に主張したが、学校はいじめと認定しなかった。しかし、被害生徒の被害届を能代警察署が受理したことで事態は一転。2021年4月にいじめ防止対策推進法が定める「重大事態」に認定され、第三者委員会がいじめの調査が行われた。