ぽかぽかと暖かい春に、ゆっくりと読書でも楽しんでみるのはいかが? 今読みたい、新刊4冊を紹介します。
『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』
漫画 龍たまこ、原作 中川瑛/KADOKAWA/1210円
男性の保護者(家父長)的態度は女性にとっては諸刃の剣。頼りがいはあっても見下す態度に傷つく。夫のモラハラに耐えられず幼い娘を連れて実家に戻った専業主婦の妻。“俺こそ被害者”と当初は怒りばかりだったサラリーマンの夫。原作は中川氏の実体験で、加害的コミュニケーションは無意識に学習したもの、意識的に学び直せば変われるとする。今は最高に幸せな夫婦とか。
『別れの色彩』
ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳/新潮社/2310円
『朗読者』で有名な著者(ドイツの法律家&作家)が、再会を通してあの日のわだかまりが変容する瞬間を描く。死別した友人に隠し通した卑怯、身分差のある恋に絶望し、音楽史家となった男が初めて知る彼女の“業”、ホームステイ中の女性と浮気して家を捨てた元夫への怒り(一見美しい話ながら男の身勝手力は絶望的)。名品揃い、“いいもの読んだ”という余韻が長く続く。
『徳川家康 弱者の戦略』
磯田道史/文春新書/880円
『どうする家康』を面白く見るために、家康の実像を知りたいという家族の要望に応え、道史パパが立ち上がった一冊。地政学的には西に織田、東の今川に挟まれた小国、松平(徳川)家。なぜ家康が天下を取れたのか。信長は服従(させる)型、秀吉は丸呑み型、家康は棲み分け型で、家康の戦略が日本社会に適合したとする。将軍退位後の家康が意外に教養人だったのにはビックリ。
『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』
高橋ユキ/小学館文庫/792円
2013年夏、12人が住む山口県の限界集落で2件の放火と5人の撲殺事件が起こる。本書は前半で村を訪ね、住人から話を聞き、拘置所の被告と面会や文通を重ねたことなどを書き、書籍化が決まった後半でさらに村の歴史に分け入る。人を痛めつける噂話の罪深さ……。妄想性障害である犯人との会話が成立しないことで著者が宮本常一風の民俗学的取材に傾いていく過程が興味深い。
文/温水ゆかり
※女性セブン2023年4月13日号