しばしば炎上騒動を引き起こすのが、テレビ番組の演出。最近では、『スッキリ』での“ペンギン池事件”が記憶に新しい。体験取材を得意とする女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、そんなテレビの演出に、率直な意見をぶつける。
* * *
いい年して「水に落ちた犬は打て」みたいなことはしたくないけど、あぁ、やっぱり言いたい。
ほかでもない、朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系、3月24日放送)のペンギン池事件のことよ。
栃木県の「那須どうぶつ王国」でペンギンにエサやりをする企画で、池の縁に立つオードリー・春日俊彰に向かってMCの加藤浩次が「気をつけろよ」「落ちんなよ!」と言って、けしかけた。それに応じて春日がご丁寧に3回も池に落ちた。すると放送直後から批判が殺到。番組はもちろん、日テレの社長まで謝罪する騒動となったのはご存じの通りだ。
同園が撮影に協力したのは、日本動物園水族館協会が公式ホームページで表明した通り、《広く人々に動物たちや命の大切さを知り学んでいただき、さらに生物多様性や地球環境の保全にも関心を向けていただくことを望んでいるから》で、うわべだけの笑いを提供するためではない。
今回の炎上は動物愛護精神を踏みにじるものだったけど、それだけじゃない。加藤・春日をはじめ、この企画を決行したスタッフは大きな思い違いをしていたと私は思うの。
それは“高齢化社会を実感していない”ということ。この記事が出る頃はすっかり暖かくなっているだろうけど、三寒四温の春先は、気温の乱高下に体がついていかないのが中高年よ。
寒い日が続いた冬の記憶がある中、ペンギンがいる冷たい池に落ちた映像を見せられてご覧よ。たとえ画面の向こうの出来事だとしても、身が縮んで笑えないって。
騒動翌日はグッと冷えて最高気温11.9℃。そりゃあ、高齢の視聴者は「非常識にもほどがある」と怒りたくもなるって。
お笑いの人たちは「だから笑いが取れるんだ」って強がるかもしれないけど、視聴者の感覚とズレている。テレビの作り手は、わが国の総人口の28.4%が65才以上(2019年10月時点)の高齢化社会であることを、頭ではわかっていても心の底では承知していないんだって。
それにそもそも、気の弱い私はイジメ芸が大の苦手でね。その昔、同棲していた男が『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)が大好きだったけれど、私はどうしても笑えない。
特にエンディングの水攻めがダメ。そのシーンで大笑いする男が理解できなかったの。スッとテレビから離れる私に、男は「一緒に見ろよ」と言いたげなむっとした様子で、それだけが原因じゃないけど、ほどなく関係は解消した。