1970年代から1980年代にかけて日本でヒットしたシティポップが、世界中で再評価されている。そして、数々のシティポップの名曲を手掛けてきたのが作曲家・林哲司氏だ。林氏は、今年デビュー50周年を迎える。
「当時は使命としてヒットを出すという職業作家としての重圧はありましたが、おかげでヒットには恵まれましたね(笑)」
林氏の作曲した松原みきの『真夜中のドア』(1979年)は、シティポップブームを象徴するアイコンとして不動の地位を確立している。
「当時の楽曲の特徴はメロディをはっきりさせたこと。サビを中心とした構成を工夫したり、コード進行を駆使したりしています。今はひとつのフレーズをループさせたり、サウンドをコピペすることで成立する楽曲が多いので、音楽的要素が昔と今とではまったく違うと感じています」
パソコンで曲を制作することに慣れた若者たちが、メロディやサウンドの如実な違いを発見したことが、ブームの要因のひとつと林氏は分析している。
林氏が作曲を手掛けた、シティポップの名曲のいくつかを紹介しよう。
●松原みき『真夜中のドア~Stay With Me~』(1979年)
作詞:三浦徳子/作曲:林哲司
若い娘が大人の女性へと成長する様を描いた楽曲。2020年に公開されたインドネシアのYouTuber・レイニッチのカバー動画で注目され、音楽配信サービスSpotifyのグローバルバイラルチャートで18日間連続首位、Apple MusicのJ-POPランキングで92か国でトップ10入り。
●菊池桃子『Blind Curve』(1984年)
作詞:秋元康/作曲:林哲司
1stアルバム『OCEAN SIDE』収録の楽曲。菊池の透き通るような美声にぴったりとマッチする歌詞を担当したのは秋元康。作曲家・林哲司の手によって、アイドルソングにシティポップのエッセンスが加えられた。インドネシアのYouTuberのカバーと、韓国DJによるリエディット作品で人気に火がついた。
●菊池桃子『Mystical Composer』(1986年)
作詞:佐藤純子/作曲:林哲司
3rdアルバム『ADVENTURE』収録の楽曲。2021年7月にSpotifyで配信がスタートすると、海外ユーザーを中心に多くの再生回数を獲得した。菊池の独特のウィスパーボイスを活かした楽曲で、特にアメリカでのユーザーの聴取が多いという。