4月6日午後3時56分、沖縄県・宮古島周辺を飛行していた陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」の機影がレーダーから消えた。隊員10人が搭乗していたとみられており、防衛省や海上保安庁による捜索が続いている。岸田文雄・首相は同日夕方、首相官邸で記者団に対し、「防衛省において確認中だ。救助最優先で取り組んでいく」と神妙な面持ちで語った。が、その後首相が向かったのは、東京・銀座にある料亭「新ばし金田中」だった。
この日、森喜朗・元首相の仕切りによる会食が設けられており、岩沙弘道・三井不動産会長、似鳥昭雄・ニトリホールディングス会長、里見治・セガサミーホールディングス会長ら錚々たる財界人が顔を揃えた。幹事役を務めた自民党の松山政司・参院政審会長は会合後、記者団に「しっかり長期政権を目指して、皆さんに支えてくれというふうに経済界の皆さんにも森元総理もおっしゃっていただいて、非常にいい会だったと思います」と答えたという。
この会食をめぐっては、「事故の渦中にやることだったのか」と批判の声が上がりつつある。ベテラン政治ジャーナリストは言う。
「岸田総理にとって、安倍晋三・元総理という後ろ盾を失った今、党内をまとめる意味でも、後継会長不在の安倍派を抑える意味でも、森氏の支えが不可欠だと考えているはず。また、安倍氏や菅(義偉)氏と違って財界人とのパイプがなかった岸田総理には、これほどのメンバーが揃う会合を外すわけにはいかないという思いがあったのでしょう。結果として、ヘリの事故のことは念頭に置きながら、会食をずらしはしなかったということです。
しかし、国家の安全保障に尽くす10人もの自衛隊員が搭乗したヘリが不明の状況が続く中、不要不急とも思える会食のために2時間も官邸を不在にした総理の判断が適切だったと言えるのかどうか。今後、批判の声が高まっていく可能性も考えられます」